書店で声をかけてきた彼は北朝鮮外交官 南北の壁を越えた愛の実話
https://www.asahi.com/articles/ASPDQ2G94PDBUHBI018.html
30代も半ばにさしかかっていたが、出会いもなかった。仕事が好きなミナの理想のパートナー像は、スマートで仕事ができる人。
でも、韓国人の男性はロシアの大学への留学生も、通訳をする仕事相手も、ミナを頼るばかり。自分で道を切り開く、そんなたくましい人はいないのか。「頼られる」ことにうんざりしていた。
そんな気持ちをまぎらわそうと、ミナはよく韓国書籍の専門店を訪れた。
胸元にリボンをあしらった白いブラウスと黒のタイトスカート、丈の高い革のブーツ。長いモスクワ生活で、ロシア人のようなファッションも着こなせるようになった。
書店は2階建て雑居ビルの1階にある。経営者は韓国人だ。
100平方メートルにも満たない小さな書店だが、本棚にはハングルの背表紙がずらっと並ぶ。韓国の映画やドラマのDVDのレンタルもしていた。
午後3時ごろ。窓から差し込むロシアの晩秋の日はだいぶ傾いていた。本を何げなく手にとって飛ばし読みしていると、突然、男性がロシア語で声をかけてきた。
(略)
お互いに自己紹介をすると、男性は「リ・サンヒョク」と名乗った。携帯電話の番号を交換して、その日は別れた。