生きるに値しない命

>障害者の隔離や断種にとどまらず、後の大量殺害にまで発展していくのには、優生学だけではなく、さらに「安楽死」という考え方が必要とされました。ナチス政権が誕生する13年前の1920年、精神科医のアルフレート・ホッヘは、法学者のカール・ビンディングとの共著で、『生きるに値しない命を終わらせる行為の解禁』という著作を発表しています。この本の中で、ホッヘは重度の精神障害者のことを「空っぽの人間容器」「精神的に死せる者」「欠陥人間」「お荷物連中」などと見下し、「生きるに値しない命」と決めつけています。
「国家有機体とは、喩えて言えば、閉じた人体のような全体であって、我々医師なら知っているように、そこでは全体の安穏のために用済みになったか、有害であるような部分や断片は放棄され、切り捨てられるのである」
「ひょっとしたら、いつの日か次のような見解の機が熟するかもしれない。すなわち、精神的に完全に死せる者の排除は決して犯罪でもなければ、不道徳行為でも、感情を逆なでする暴挙でもなく、むしろ許された有益な行動なのだという見解である」