嫌だったカミングアウト、紅白の衣装 中村中が今だから言えること:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASPDW4D57PDSUCVL00L.html

2007年にNHK紅白歌合戦に出場したシンガー・ソングライターの中村中(あたる)さん(36)。デビュー直後、意に沿わぬ形でトランスジェンダーであることをカミングアウトすることになり、紅組で出場した紅白でもショックを受けることがあったといいます。デビューから15年、カミングアウトによって負った傷や、現在について語りました。

――男性の体に生まれ、性自認が女性のトランスジェンダーであることをデビュー直後に公表されました

デビューした2006年に公表しました。私は学生時代から散々いじめられてきました。公表したら世の中にどう見られるかというのは、なんとなくわかっていました。

「友達の詩」というセカンドシングルを発売する時に公表に至ったんですけど、その時には、これが売れるための最善の道だろうということで、周囲にすごく説得されました。私の中にも認知されたい、もっと活躍の場を広げたいという思いがあったのも事実ですが、本当につらかった。陵辱されたような思いでした。反対していましたが、最後はあきらめました。

今も許せない。私もいけないんですけど、そんな人たちのためにやることじゃなかったな、という後悔はあります。命を削るようなことでしたから。「命を削りたい」と思えない人のために、自分の命を削るべきじゃなかったとは思っています。

――カミングアウトの前と後で、周囲の反応や接し方はどう変わりましたか

「お風呂はどっち入るの?」「トイレはどっちなの?」みたいなことを好奇心で平気で聞いてきたり、失礼なことを言われたり、「何を言ってもいい、何を聞いてもいい」という対象になったのが苦しかったです。それと同時に、日常的にこの社会で女性が受けている偏見の強さも感じました。

ある日のラジオの生放送では、「女性として生きていくんだったら、やっぱり夢は結婚でしょう?」と聞かれました。「あんまりしたくない」と言うと「え? だってウェディングドレス着たいでしょ? 子どもも欲しいでしょ?」なんて言われました。

会っていきなり、「胸が大きくなった」とか「スタイルが良くなった」とか言ってくる人もいました。本当にまだ男尊女卑がひどいな、と思います。女は綺麗(きれい)にしてろ、綺麗にしてなきゃいけない、って思ってる人もいまだに多いですよね。

――トランスジェンダーへの理解についてはいかがですか

カミングアウトしてから、「かわいそう」とか「守らなきゃ」とかって思われるんですけど、私はどっちかって言うと自分で自分を守りたい。強くありたい。

そんなことを言うと驚かれる。「男らしくなりたいんですか?」とか。やっぱり、トランスジェンダーはこうだとか、女性はこうあるべき、みたいなものに、ずっとみんなとらわれていて、これは本当になかなか時間がかかることなんだなって思いますね。

(以下本文リンク先