かんなみ新地と呼ばれる兵庫県尼崎市の「歓楽街」が約70年の歴史に幕を下ろした。11月1日に市と尼崎南署の連名で警告書が出され、直後に店側が一斉に営業を休止した。小学校が近くにあり、市民からは長年「違法風俗」の取り締まりを求める声があった。なぜ今、事態が動いたのか。

 阪神尼崎駅から西へ1キロ弱、木造2、3階建ての建物が並ぶ一画に、「かんなみ新地」はあった。約100メートル先は小学校だ。

 飲食店の形態をとっていたが、警告書は、実際には性的サービスの提供を目的としている疑いを指摘し、性風俗店の営業禁止区域であることから直ちに中止を求めた。市保健所によると、飲食店営業許可を出していたのは36店。警告後、13店から廃業届があった。

 近くの小学校に子どもを通わせる母親(46)は「結婚後引っ越してきてから知って驚いた」と話す。扉が全開で客引きの様子も丸見えだったという。学童保育帰りや塾通いの子どもらが前を通る。別の母親(37)は「お姫様みたいな人おるけど何してるん? と娘に聞かれてごまかすしかなかった」と苦笑いする。

 週末には県外ナンバーの車が一方通行を逆走したり、店での行為をコンビニで話したり、治安上よくなかったという。「ずっと無法地帯だったのが謎です」

 近くに住む女性(80)は「見て見ぬふり。私ら個人ではどうしようもできないから」と諦めていた。

 市は苦情がある度に警察に確認と取り締まりを依頼してきたが、解決にいたらなかったという。梶本修司・危機管理安全局長は「市に直接行使できるものがない」という。だが、近年はひったくり防止から暴力団排除まで、警察との連携が進み、事態が動いた。

 尼崎南署によれば、過去にも検挙していたが、すぐ元の営業形態に戻っていったという。岩田克之副署長は「すんなり言うことを聞くのは意外だった」とし、「対策しなければといういろんな人の思いがたまたま重なった。暴力団排除と同じで、警察が捕まえるだけでは解決しない」とみる。

 稲村和美市長も11月の定例会見で「こんなに一斉に閉めるようになるとは思わなかった。市と警察が組むことで、摘発を辞さないということがすぐ伝わった」と強調した。働いていた人の生活相談として、廃業届の提出時に、支援窓口のチラシを渡しているという。

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