原発「処理水」海洋放出時の風評対策、300億円規模の基金創設へ…政府が行動計画

 東京電力福島第一原子力発電所の放射性物質を含んだ「処理水」の海洋放出を巡り、政府は28日に関係閣僚会議を開き、風評被害対策や賠償に向けた行動計画を決定した。風評被害で需要が減った水産物を買い取るため、300億円規模の基金を2022年に創設し、業種別の賠償基準を定めることなどが柱となる。

 風評被害対策としては、国が冷凍可能な水産物を買い取って加工業者に販売したり、販路拡大を支援したりするための基金を設ける。21年度補正予算に関連経費300億円を計上していた。

 22年1月から海外で風評被害の実態調査も始める。日本政府の要請を受け、国際原子力機関(IAEA)が人や環境に対する処理水の影響や放出方法の安全性などを調べており、中間報告書を来年中に公表する。加工・流通業者などを対象に、処理水の安全性に関する説明会も開く。

 農家や観光業者などが受けた風評被害への賠償が円滑に支払われるように、業種別の基準を22年中にまとめるよう東電を指導する。原発事故による風評被害には賠償の仕組みがあるが、被害金額の確定に時間がかかり、地元から批判を受けた。被害者が立証する負担を軽くするため、用いる統計データや基準とする年を明確にすることで関係者の不安を取り除く。

 同原発では、原発から生じる汚染水からトリチウム(三重水素)以外の大半の放射性物質を取り除いた処理水を敷地内のタンクで保管している。処理水が増え続けると廃炉作業の支障になるとして、政府は今年4月、海洋放出する方針を決定した。海洋放出は国内の原子力施設で実績がある。

 しかし、地元の漁業関係者を中心に風評被害への懸念は根強く、全国漁業協同組合連合会は「断固反対」の立場を崩していない。東電は23年春の放出開始を目指しており、政府は行動計画をまとめることで理解を得たい考えだ。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211228-OYT1T50053/