日本は米国からのジャガイモ輸入について制限を設けているため、一部の外食産業は調理済み食材としてジャガイモを輸入している。マックフライポテトには米国産のジャガイモが使われており、米国内でカットや下揚げが行われ、冷凍された状態で日本に輸入される。このため貿易が滞ると、品薄を引き起こすリスクがある。

 今回の直接的な原因は、カナダで記録的な豪雨が発生し、バンクーバーの港で混乱が生じたことである。だが、この理由はあくまで直接的なものであって、一連のトラブルには構造的要因が存在すると考えた方がよい。実際、他の企業や業種でも似たような問題が発生しており、影響はあらゆる分野に及んでいる。

 2カ月前の10月には、ケンタッキーフライドチキンを展開する日本KFCホールディングスが「ポテト」について販売一時休止の可能性について言及したほか(対象期間は10月8日から21日)、米国ロサンゼルス港で荷揚げが滞留し、一時、70隻のコンテナ船が沖合で待機するという異常事態も発生している。

 物流が混乱しているため、給湯器やプリンタ、カーナビ、ゲーム機など、多くの製品が品薄になった。コロナ危機で業務の遂行にある程度の混乱が生じることは予想の範囲内だったはずだが、なぜここまで事態が深刻化するのか疑問を持った人も少なくないだろう。

米中対立が品薄を引き起こすメカニズム
 コロナ以前、各国企業は全世界を網羅した巨大なサプライチェーンを構築しており、1円でも安く購入できる見通しがあれば、地球の裏側からでも商品を調達するのが当たり前だった。全世界を網羅したサプライチェーンは便利ではあるものの、ガラス細工のような構造であり、どこかでトラブルが発生するとたちまち調達が滞ってしまう。
https://news.livedoor.com/article/detail/21420843/
 これまでの時代はあくまで「平時」だったので、緻密なオペレーションを実施することで何とかサプライチェーンを維持することができた。ところが米中の政治的対立とコロナ危機という、従来の常識を覆す出来事が相次いで発生したことから、状況が一気に変わってしまった。

 これまで1つに集約されつつあった経済圏が3つに分断されれば、規模のメリットが消滅し、各経済圏における調達コストは上がらざるを得ない。しかも東南アジアを中心に新興国がめざましい経済成長を実現しており、コロナ後には、全世界の需要がさらに増大するとの予想も出ている。食糧や天然資源は供給量をすぐには拡大できないため、需給バランスはますます悪化する。

 これは資源をめぐる争奪戦ともいえる状況であり、買い負けした国は品薄などの混乱を招きやすい。正式な統計がないので推測するしかないが、グローバル企業は相対的に規模が小さい日本市場向けの出荷を後回しにしている可能性もある。