相手のすべてを受け入れるのが本当の恋愛ではないのか、とナホさん(40歳)はずっと考えているという。
大恋愛だと思っていた2歳年下の恋人に過去を打ち明けたところ、引かれてしまい、関係がぎくしゃくしてそのまま別れてしまったからだ。
「あの関係は何だったのか」と、3年前のできごとを、彼女は今も引きずっている。

彼にすべてを受け止めてほしかった

ナホさんが2年つきあい、お互いに結婚したいと熱烈に愛し合った彼に、
自分の秘密を打ち明けたのは互いの両親に会いに行く日程を話し合っていたときだ。

「私、若いころに中絶しているんです。避妊していたんですが、失敗してしまって。
当時は大学生。まだ産める状況ではなかった。相手も私も納得の上でした。そ
れ以降、そのことはやはり私の中ではある種の負い目になっていた。だ
から結婚したい、どうしてもこの人と一緒にいたいと思った彼に、すべてを打ち明けようと決めたんです」

何でも話し合っていこうと約束した彼は、その話を聞いて絶句した。
実際、中絶した人から話を聞いたのは初めてだったという。

「だからといって、世にも珍しい話というわけではないし、若気の至りでどうしようもなかったんですよね。
今後、子どもをもつかどうかはわからないけど、私は彼に秘密をもっているのが心苦しかった。
もちろん、それは私にとって大きな傷ではあります。でも聞いて絶句した彼に、こちらが絶句しました」

彼は、ひと言も発せずに黙り込み、しばらくたってから「考えさせて」と言ったという。
「犯罪を白状したわけでもないし、15年以上前の話。そのことで私への評価が変わるのかと、私は私で腑に落ちない気持ちでした」
「どうしても無理」と言われて

2週間ほど連絡をとらない日々が続いた。
毎日、何度もメッセージをやりとりしてきた2年間だったから、それほど離れているのは初めてだった。

「彼の断罪を待つ身ですよね。なんとか許してほしいと思いながらも、どうして彼に許しを請わなければいけないのかという気持ちもありました」
そして彼から返ってきたのは、「ごめん、やっぱりあなたとは結婚できない」という言葉だった。

「ショックでした。私の人生を結局は否定するのか、と。
話し合おうと言ってみたけど、彼からは話し合ってどうにかなる問題ではない、と。
それもそうですよね。でも私はそれを機にすっかり心身の調子を崩してしまい、半年ほど心療内科にかかりました。今も、心から笑えないんです」

友人たちが励ましてくれた。中には彼に直談判してやると立ち上がった女友だちもいる。
だが、それは意味がないとナホさんは止めた。

「きっと彼はそういう女性を生理的に受けつけないんでしょう。気持ちはわからないけど、そういう人だったと思うしかない。
ただ、女友だちの間では、やはりそういうことは話さないほうがいいねという結論になりました。
そんなの全然気にしないよと言われても微妙な気分だし、彼みたいに気にされると関係がおかしくなる。
笑える程度の過去じゃないと、受け止めきれない男性はたくさんいるんでしょうね」
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