気候変動対策の重要性が高まる中、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない電源として原発の活用を求める声が欧州で広がっている。世界を震撼(しんかん)させた2011年の東京電力福島第1原発事故は欧州の世論にも大きな影響を与えたが、再び原発回帰に向かう背景に何があるのか。

原発は脱炭素電源

 「これがフランスのメッセージだ」。フランスのマクロン大統領は21年11月9日のテレビ演説で原発の新規建設に着手すると表明した。英国で開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を念頭に、脱炭素社会の実現に原発が欠かせないとの認識を世界にアピールした。
 フランスは国内発電量の7割を原発に依存する原発大国。福島第1原発事故を受け、当時のオランド大統領は依存率を5割に下げる「縮原発」を打ち出し、マクロン氏もその方針を引き継いできた。目標とする「50年に温室効果ガス排出実質ゼロ」を達成するために原発が不可欠だと訴えたマクロン氏の演説は、その「縮原発」路線を事実上、軌道修正したものだ。
 COP26の議長国を務め、脱炭素の議論をリードしてきた英国も原発を脱炭素電源と位置づける。ジョンソン首相は10月、脱炭素に向けて昨20年に打ち出した「グリーン産業革命」の具体的な戦略を発表。その中で原発を推進していく姿勢を明確にした。

再生エネ不発、記録的な石炭火力発電

 欧州は21年、風が例年よりも弱いことが原因で「夏季の発電量は想定の3割減」(英風力発電会社)となり、再生可能エネルギーによる発電が不調となった。新型コロナウイルス禍からの経済回復によるエネルギー需要の増加も加わり、火力発電の比率が急増。欧州の天然ガス価格指標「オランダTTF」は年初比約5倍という記録的な高値で推移している。

https://mainichi.jp/articles/20211230/k00/00m/020/026000c