東京都が温室効果ガスの排出削減に向け、2022年度から30年度まで9年をかけ、都営住宅や交番、消防署など2000か所以上の都有施設に、太陽光パネルを設置する方針であることがわかった。
初年度だけで約100億円の予算を見込む。都が率先してパネル設置に取り組み、家庭や企業での設置を促す。
環境省によると、都道府県が行う太陽光パネルの設置事業としては、最大規模になる。
都はこれまでも、都有施設に太陽光パネルの設置を進めてきた。
2018年10月に開場した豊洲市場(江東区)や敷地面積の広い浄水場では、最大出力が1000キロ・ワット以上ある「メガソーラー」などの大規模発電設備も導入してきた。
一方、施設規模の小さい都営住宅や警察・消防施設、都立学校などでのパネル設置は遅れていた。都内に約1260か所ある都営住宅では、設置済みの建物が1割に満たず、設置していても1棟あたりの出力は一般家庭と同等の5キロ・ワット程度が大半だった。
こうした状況から22年度以降、都は都営住宅に加え、警察署や交番(約930か所)、消防署・消防出張所(約290か所)、都立学校(約250か所)などに設置の幅を広げる。
建物の日照条件や耐久性などの面で適している施設には、全て設置する方針だ。
すでに警視庁や東京消防庁との調整に入っており、22年度は建物の状況調査のほか、実際に約280か所でパネルも設置する計画で、3000キロ・ワット程度の出力を目指す。
都の主要施設の19年度の太陽光発電出力は計7860キロ・ワット。
都は24年度までに、これを1万2000キロ・ワットへと引き上げ、温室効果ガスを00年度比で約30万トン削減することを目指しており、達成に向けて削減の加速化も図る。
温室効果ガスの削減を巡っては、政府が50年までに実質排出ゼロとする目標を掲げている。
都はさらに、都内の温室効果ガス排出量を、30年までに00年比で半減させるとの独自目標を打ち出しているが、19年度は6211万トンで、00年度とほぼ変わっていない。
都の19年度の調査では、 島嶼とうしょ 部を除いた都内の建物のうち、一定の日照が期待でき、パネル設置に適している建物は225万915棟あったが、設置率は4・2%にとどまる。
都環境局幹部は「東京の建物の屋根は太陽光パネルを普及させる大きな余地がある。『 隗かい より始めよ』の精神で、まず都有施設から取り組みたい」と話す。
今後、太陽光パネルを設置した都有施設では、発電した電力を自家使用し、余剰分は売電も検討する。
災害時に避難所として使われる都営住宅では、蓄電池の設置も視野に入れている。
小池百合子都知事は12月下旬、読売新聞の取材に「大都市・東京における(温暖化対策の)ポイントは建物だ。
警察、消防、都営住宅など、あらゆる建物で太陽光発電設備の設置を進める」と語り、「ゼロエミッション(温室効果ガスの排出ゼロ)に向け、本腰を入れていく」と意欲を示した。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211231-OYT1T50102/