うどん代 英では2倍

ロンドンの金融街シティーに日本のうどんチェーン「丸亀製麺」の店舗がある。大勢の客が箸を上手に使ってうどんをすする。

日本でおなじみのメニューが並ぶ。違うのは値段だ。最も人気の「Kake(かけうどん)」は4.45ポンド(約690円)、
「Kamaage(釜揚げうどん)」は3.45ポンドと、いずれも日本のほぼ2倍にあたる。

とはいえ、周辺の飲食店で昼食を取ると10ポンド(約1550円)は下らない。英国人に丸亀製麺のうどんは「お値打ち」に映る。
「現地の相場を意識しながら価格を決めている」(広報)という。運営会社・トリドールホールディングスの本川功平さん(41)は
「周りの店と比べて価格競争力は高い」と話す。

日本のモノやサービスの値段は、他の先進国から見ると今や割安だ。むろん消費者にとって安さは望ましい。
だが、物価は「経済の体温」を示すとされる。日本経済の「体温」は低いままだ。

消費者は賃金が増えず、低価格志向が強い。企業はなかなか値上げに踏み切れない。

経済協力開発機構によると昨年の日本の平均賃金は3.9万ドル(約440万円)で、30年前からの伸び率は4%。
この間、米国は49%、英国も44%増えた。

企業が新たなビジネスにお金を投じ、もうけを従業員に還元して消費を促す――。高い経済成長をもたらしてきた資本主義の仕組みが、うまく働かない。

賃金の伸び悩みは、日本の消費者の「買う力」を低下させる。米アップルが昨秋、発売した新型スマートフォン
「iPhone(アイフォーン)13」は最上位機種が19万円を超える。SNSでは「買えない」「高い」といった声が相次いだ。

賃上げが続く中国では様相が異なる。同じ製品が税金などの関係で1万2999元(約23万6000円)と日本よりはるかに高い。
それでも、北京の国有物流会社に勤める男性(27)は購入した最上位機種を手に、
「記憶容量が1テラ・バイトあるし、価格帯は納得できる」と、こともなげに話す。

香港の調査会社によると、アップルは昨年10月の中国スマホ市場でシェア(占有率)22%を占め、トップに立った。
高価格帯で勝負するアップルの「爆売れ」は、中国の中高所得層の購買力向上を端的に示す。
コロナ禍前に中国人観光客が割安な日本製品を「爆買い」したのもうなずける。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220104-OYT1T50222/