「なぜうその報告を」一番知りたかった問いには答えず…川口市いじめで元校長らが元生徒に直接謝罪も

松崎寛幸元校長は用意してきた謝罪文のメモを読み上げた。
「早期の対応が必要であったと深く反省している。報告、連携、相談について不足だったと感じている。
正しい情報が伝えられず、元生徒の話を十分に聞いてあげられなかった。
助けられなかったこと、思いをしっかり受け止められなかったこと、深く傷つけてしまった」

しかし、実際には元生徒は、松崎元校長にいじめを直接訴えていた。元生徒は「松崎校長や教育委員会は、なんで文部科学省や県教委に、
僕と話していないとか僕に会えていないとか、うそばかり報告してたんですか」と一番聞きたかったことを最初に質問した。

沈黙が続き、森田さんは「答えてあげてください」と促したが、元校長から答えはなかった。

元部活顧問の岩井厚裕教諭は、元生徒からいじめの相談の手紙を受け取り、返事も書いていたが「覚えていない」と答えた。
また、松崎元校長は裁判が続いている最中に、元生徒が笑顔で写っている写真を第三者に見せ
「こんな表情しているんだから、いじめなど受けていない」と話していたことを認めた。
森田さんが「息子はマスコミにも顔を出していない。職務上知った個人情報を広めていいのか」と詰め寄ると、
茂呂教育長は「初めて聞いた」と話し、目をつむってうつむいた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/152835

裁判は異様な光景から始まった。
2018年9月の第1回口頭弁論。市側の弁護士が突然立ち上がり
「(元生徒の)卒業証書を持ってきた。渡したいがどうしますか」と発言した。
「法廷で卒業証書とはあまりに非常識ではないか」。市側の態度に元生徒側は怒りをあらわにした。

市教委は同年3月、いじめを認定した第三者委の報告書を受けて記者会見し、
元生徒の母親に謝罪して市教委と学校の判断の甘さを全面的に認めていた。

ところがこの弁論で、市側はいじめの具体的な事実の説明と立証を元生徒側に求め、対決姿勢を鮮明にした。

いじめ防止対策推進法に基づいて教育現場はどう対応したのか。
それこそが焦点になるはずだったが、市側は
「法律でのいじめの有無と、自治体相手の損害賠償でのいじめの有無は異なる」などとし、
いじめの存在を否認した。「いじめ防止法には欠陥がある」とまで主張し、
「いじめ被害の申告に組織的な対応を一切しなかった」とする元生徒側の主張と全くかみ合わず、裁判は混乱を続けた。

「体罰」は励まし

教諭は裁判長の求めに、げんこつで頭をたたいたり耳を引っ張っぱるなどの場面を法廷で再現し、
「本人から体罰の訴えはなかった」と主張した。
https://mainichi.jp/articles/20211212/k00/00m/040/045000c