これ見よがしに「冷や飯組」の会合に参加
その一方で、首相在任中、「ワクチン一本足打法」と揶揄され続けた菅氏だが、トップリーダーとしての強権発動でのワクチン接種加速化への国民の評価はなお高い。衆院選での全国各地での応援遊説で「菅さん、ワクチンありがとう」などの感謝と激励の声が相次ぎ、菅氏も「勇気と自信がよみがえった」と述懐する。
菅政権を支えた無派閥議員による「ガネーシャの会」など、いわゆる菅グループの派閥化については、菅氏はなお否定的だ。ただ、「政策実現のための議員集団は必要」としており、年末に冷や飯組とされる二階派幹部や石破茂元幹事長との会合にも、これ見よがしに参加した。
岸田首相を支える安倍、麻生、茂木の3大派閥と谷垣グループが構成する主流派は、「数のうえでは盤石」にもみえる。しかし、最大派閥の安倍派を率いる安倍晋三元首相と岸田首相の微妙な確執が、主流派の結束維持に影を落としている。
菅氏とともにメディアへの露出を増やしている安倍氏は、菅氏との絆の強さを繰り返し、早期の「菅派結成」をけしかける。岸田首相は麻生、安倍、菅の3人の首相経験者との対立回避に腐心しているが、オミクロン政局の今後の展開と菅氏の出方次第では、政権の基盤が揺らぐ可能性を指摘する声も少なくない。
「政治的に終わった人」とされてきた菅氏の存在感を改めて際立たせたのは、昨年12月の臨時国会閉幕直後22日夜の2つの会合だった。
1つは安倍、麻生、茂木の3大派閥トップの会合で、3氏は一致して岸田政権を支えていくことを確認したとされる。しかし永田町で注目されたのは、同時進行で開かれた菅、石破両氏を中心とした会合だった。
主催者ながら欠席を余儀なくされた二階氏の代理として同氏最側近の林幹雄元経済産業相、二階派幹部の武田良太前総務相、森山派の森山裕総務会長代行が参加したからだ。菅氏と林、武田、森山各氏は菅政権時代の親密な仲間。これに石破氏が加わったため、永田町では「すわ、反主流派連合の旗揚げ」との臆測が飛び交う騒ぎとなった。
石破氏ら出席者は「総裁選の反省会」などとはぐらかしたが、いずれも反岸田の立場で河野氏を支持した面々。詰めかけた記者団に「我々の一体感は続いている」などと思わせぶりに語る参加者もいた。
菅氏のメディアへの露出が一気に注目され始めたのはこの会合がきっかけ。菅氏は12月24日の民放BS番組で河野氏について「突破力、国際性に期待して応援した気持ちは今も変わらない」と明言。ポスト岸田には河野カードを掲げて挑む意向をにじませた。
(中略)
ただ、この谷垣グループも加えた主流派の陣容をみると、麻生、岸田、谷垣グループはいずれも源流は宏池会(現岸田派)で、党内には「首相と麻生氏の狙いは大宏池会」(安倍派幹部)との臆測も広がる。
保守本流復活で「清和会主導」に終止符?
この「大宏池会」構想はかねて麻生氏が画策してきたとされる代物。合流すれば一気に安倍派(清和会)をしのぐ最大派閥となり、党運営の主導権を握れるからだ。しかも、戦後政治で長期間続いた「55年体制」下で、宏池会と同盟関係だった旧田中(角栄)派を受け継ぐ茂木派(経世会)も加えれば、故吉田茂・池田勇人両元首相が築き上げたいわゆる「保守本流」の復活ともなる。
これに対し、安倍派は吉田、池田両氏と対立した故岸信介・福田赳夫両元首相の系譜で、いわゆる「保守傍流」だ。それだけに、今回の「大宏池会」を視野に入れた動きは、福田赳夫氏の側近だった森喜朗氏の2000年の首相就任以来、「一時期を除いて自民党を牛耳ってきた『清和会主導』に終止符を打つ」(麻生派幹部)との思惑もにじむ。
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