Aさんが入所していたのは、埼玉県さいたま市にある宗教法人Bが運営する施設だ。元建設現場のプレハブ宿舎2階建て2棟を細かく仕切って60人が住んでいた。
あてがわれたのは、3畳の個室。隣室とは薄いベニヤ板で仕切られているだけで、音は筒抜けだった。

建設現場だった場所を利用しているためか水道設備はなく、生活水は井戸水を使っていた。トイレは屋外にしかなく、しかも個別の小便器もなくコンクリートの壁があるだけ、大便用には囲いがあるだけだった。
排泄物や洗濯排水、生活排水などはトイレのすぐそばの川にそのまま垂れ流していた。

 布団は使いまわしで、南京虫だらけ。Aさんはかゆくて眠れず、虫よけスプレーを買った。

「生活保護を受給する際に路上生活などの理由で布団の持ち合わせがない場合は、『一時扶助』といって布団代を申請することができます」と、生活困窮者支援団体であるNPO法人『ほっとプラス』(さいたま市)の高野昭博生活相談員は語る。

 ところが、実際には施設側が入所者の布団代という名目で申請しながらも使いまわしの布団しか与えなかったり、炊飯器などの家具什器費を申請して、実際には共同で使わせたりする事例が散見されるという。

「無低を出て、アパートの入居が決まった人が布団代を申請したところ、“一度申請したから”と、身に覚えのない理由で拒否されたことがありました」と高野さんは語る。

生活保護費は封筒ごと没収、
手渡されるのは1日1000円以下
 Aさんは生活保護受給日、ほかの入所者とともにマイクロバスに乗せられた。車の中で受給証と収入申告書、黄色いリボンを渡される。
福祉事務所に到着すると、施設スタッフの監視のもと、窓口の前に並ばされた。Aさんが受け取った生活保護費は13万円弱。
しかし、すぐそばにはスタッフが袋を持って待ち構えており、封を切らずに封筒ごとそのまま没収される。それと引き換えに黄色いリボンを外していいことになるのだ。

 Aさんが自由に使えるお金は、毎日渡される1000円のみ(日曜日を除く)だった。昼食が出ないので、昼食や生活用品などを買うとあっという間になくなってしまう。

「生活保護費12〜13万円を支給されて、住居費と食費で10万円以上搾取されるというケースが多いです」と、高野さんは語る。

 朝食はご飯、味噌汁、漬物、納豆、夕食はレトルトカレーなどといった粗末な食事しか与えられない。
しかも、井戸水は飲める状態のものではなく、沸騰させて冷ました水がポットに置かれてあったが、Aさんは飲む気にはなれず、徒歩10分の距離にあるコンビニでカップ麺を買うときに、店で熱湯を入れてもらったそうだ。


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