栃木県那須町の「那須サファリパーク」で、飼育員3人がトラにかまれた事故について、日本動物園水族館協会(東京)は17日、調査報告書をまとめ、「基本的な安全確認作業の不徹底」が要因だと指摘した。施設側の説明からも、2人で行うトラの収容を事実上1人で行うなど、マニュアルや基本ルールに反した行為が重なり、事故に至った様子が浮かび上がる。

 施設によると、獣舎の扉は、トラの立ち入らない従業員通路からワイヤを使って開閉する。収容する際、飼育員がワイヤで扉をつり上げ、トラが鉄格子の獣舎の中に入るのを目視で確認した後、扉を下ろす。施設のマニュアルでは、この作業を2人で行う決まりになっていた。

 事故前日の4日夕方、トラの収容作業を男性飼育員2人が担当。トラを通路まで入れた後、1人は別の作業のためトラ舎の建物を離れ、もう1人に獣舎への餌入れや収容作業を任せた。残った方の飼育員は「トラを獣舎に入れたかはっきり覚えていない」と説明しているという。

 5日朝の開園前、この日の担当の女性飼育員が、展示スペースの安全を確認するため、トラ舎内の空いた獣舎を抜けようとしたところ、雄のトラ「ボルタ」と鉢合わせした。ボルタの獣舎の中には餌が手つかずで残っており、扉も閉じた状態だった。施設では、ボルタが獣舎に入れないまま、一晩トラ用通路にいた可能性が高いとみている。

 飼育員がトラ舎を通り抜けて展示スペースに出ることも、本来は想定されていなかった。建物の外を回る通路があり、飼育員はトラ舎内を通らないのが前提だったという。だが、施設によると、飼育員がトラ舎内を通り抜ける行為は、事故以前にもたびたびあったようだ。
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 協会の調査報告書では、トラが獣舎の中にいるかどうか、目視が徹底されていなかったことに言及。出入り時の基本的な安全確認が不十分だったとし、全国の加盟施設に再発防止を呼びかける通知を出した。

 このほか、事故発生時の対応も課題として挙げられた。女性飼育員の悲鳴を聞いて駆けつけた飼育員2人も相次いで襲われ、二次被害につながったからだ。協会の坂本英房・安全対策部長(61)は「仲間を助けようとする気持ちはよく理解できる」としたうえで、「麻酔でトラが動かなくなるまで、遠くから水をかけて気を引くなどの方法もあった」と指摘した。