2006年に国内大手家電メーカー・東芝の薄型テレビブランドとして誕生した「REGZA(レグザ)」。
11年の地上アナログ放送の停波によるテレビの買い替え期には、高画質や多機能を求めるマニア層から高い支持を集めた大人気ブランドだ。

しかし、15年に発覚した同社の不正会計疑惑のあおりを受け、テレビ事業を手掛ける東芝映像ソリューションは、18年に中国のハイセンスグループに売却された。
大手国内メーカーの事業が分割され、海外メーカーに買収されていくその姿は、台湾・鴻海科技集団によるシャープの買収と並んで、家電メーカーの落日の象徴として語られることもあった。
しかし、レグザブランドはハイセンス傘下となった後、販売網の混乱などで一時的にシェアが落ちたもの、結果的に大きく飛躍。トップシェアに届くところまで業績を回復しているのだ。


この状況が大きく変わるのが15年だ。東芝本社で発覚した不正会計疑惑により、家電事業全体も窮地に立たされる。
テレビ事業は、家電全般を担当していた子会社である東芝ライフスタイルから分割され、東芝映像ソリューションとなり、その後17年11月に中国のハイセンスグループへ発行株式の95%が売却された。

 東芝のネガティブな報道が連日続き、会社の先行きも不透明になったことなどで、レグザの人気も急速に低下していく。シェアは最終的に12〜13%まで下落したそうだ。

 また体制の変更に伴って、商流も変更。東芝時代は、販売会社を通して製品を量販店へ卸していたが、ハイセンスグループになったことで、
販売体制の見直しも迫られた。量販店から見ると口座や取引先が変更になったことで、ここでも混乱が発生。これもシェア下落の一因となった。

 しかし中国市場ナンバーワン、世界市場4位のハイセンスグループの傘下に入ることは決してマイナスではなかった。

 「我々は、世界市場で戦うハイセンスグループに、レグザの技術力はすごいと認められて入ったと思っています。買収に当たって東芝へ戻った社員もいますが、
映像づくりのキーマンは全員残っていますので、基本的に開発力は変わっていません。むしろ、ハイセンスグループ入りしたことで加速しています」(本村さん)

 最も大きいのは調達コストだ。世界シェアには名を連ねなかった東芝1社での調達力と、世界トップクラスの調達力はレベルが違ったと本村さんは語る。
さらに製品開発で最もコストがかかる金型へ投資もハイセンスと共有でき、テレビの組み立てもハイセンスの最新鋭工場が使えるなど、メリットは多かった。

 「レグザブランドの製品はすべてオリジナルデザインです。ただベースの金型などは、ハイセンスのものを使うこともあります。
例えば77インチの有機ELテレビのような高額商品は、販売数はそれほどないのに、金型だけで数億円かかります。つまり、日本国内の販売だけだと作れません。
それがハイセンスグループの金型として、我々も使えるのです」(本村さん)

 さらハイセンスがテレビを主力にするメーカーだったため、映像に対する投資を惜しみなく行う点も大きく奏功した。それを象徴するのが、
CES 2022で発表した新開発の映像プロセッサ・レグザエンジン「ZR α」だ。本村さんによると、この映像プロセッサの開発には3年以上の期間と数十億円のコストが掛かっているという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/63a5730824e5f65ee60793f871777ce3599a3027?page=5