大学卒と大学院卒の微妙な差…進学の意味がない日本、低学歴化の危機
文部科学省『学校基本調査』によると、2020年度の大学進学率は54.4%。過去最高を記録しました。
OECDの資料から世界主要国の大学進学率をみてみると、トップはギリシャで67.6%。「ベルギー」が63.9%と続きます。日本は14位。先進7ヵ国ではフランス(10位)、英国(12位)に次ぐ順位です。ちなみに受験戦争が過酷なことで知られるお隣の韓国は8位で57.6%です。
ただUNESCOの資料をもとに大学進学率をみてみると、また違う結果がみえてきます。トップは変わらず「ギリシア」で148.5%。「オーストラリア」115.9%が続きます。日本はOECD加盟国のなかでは30位と下位に位置します。
【世界「大学進学率」上位10】
1位「ギリシャ」148.5%*2
2位「オーストラリア」115.9%*2
3位「トルコ」115.0%*2
4位「マカオ」113.0%*1
5位「グレナダ」104.5%*3
6位「ウルグアイ」102.6%*2
7位「韓国」98.4%*2
8位「プエルトリコ」97.5%*4
9位「アルゼンチン」95.4%*2
10位「ラトビア」94.8%*2
OECDの資料は、入学者の各年齢別人数とそれに対応する各年齢別人口から算出されるもので、日本の短期大学相当の大学は含まず、さらに「25歳未満」かつ「初めて大学に入学する」人を対象にしています。それに対し、UNESCOによる大学進学率は日本の短期大学相当の大学を含み、大学への総入学者数を学入学適齢人口で割った比率で、浪人生や社会人などの適齢年齢以外入学者なども含むため、100%を超える場合があります。
これらの資料から「大学進学」のさまざまな一面がみえてきますが、そのひとつが日本の場合「高校卒業→大学入学」の一辺倒だということ。世界ではさらに専門性を高めるために、社会人を続けながら大学で学ぶという国も珍しくなく、キャリアの多様性にも繋がっています。「就職予備校」といわれる日本の大学教育。そろそろ転換期なのかもしれません。
日本の「大学院進学率」は主要国でも下位グループ
進学率でもうひとつみていきたいのが、「大学院進学率」。こちらはOECDの資料からみていきます。それによると、世界の主要国で最も大学院進学率が高いのは「フランス」で38.6%。「ポーランド」で30.9%、「ノルウェー」27.6%、「ベルギー」27.2%、「ポルトガル」27.1%と続きます。一方、日本は……38ヵ国中29位。大学への進学に比べて、大学院への進学は主要国でも非常に少ない国のひとつです。
【世界主要国「大学院進学率」上位10】
1位「フランス」38.6%*
2位「ポーランド」30.9%*
3位「ノルウェー」27.6%
4位「ベルギー」27.2%
5位「ポルトガル」27.1%
6位「スロベニア」27.0%
7位「スロバキア」25.9%
8位「ロシア」25.3%*
9位「イタリア」23.9%
10位「デンマーク」23.0%
先進国で「修士・博士」の取得者が増加していますが、日本では減少傾向にあります。なぜこのようなことになっているのか。その一因は給与にあるといわれています。
厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、男性会社員の平均年収は546万円。大学卒に限ると637万9,000円。大学院卒に限ると791万1,000円。その差は150万円ほどです。
さらに従業員1,000人規模の企業に限ると、大卒男性会社員の平均年収は725万6,000円、大学院卒男性会社員は831万2,000円。その差は100万円ほどになります。
大学院を卒業したほうが、平均年収は高くなりますが、「専門性を高めても100万円程度の差」というのが正直なところ。就職活動においても、大学院卒の専門性を活かせるところは少なく、むしろ不利になるという声も多く聞かれます。
このような日本に嫌気が差し、専門性を高めたいと考える優秀な学生は海外へ流出。日本失速の要因になっていると分析する専門家もいます。このままでは日本は「低学歴な国」になってしまう……そのような危機に直面しています。
(全文はこちら)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b9a8fb1f4a0d490a10dd5b5f1f5cc43b6b21b16c