25人が亡くなった大阪市北区の放火殺人事件の現場で毎晩、犠牲者一人ひとりに祈りを捧げる詩人がいる。
家路を急ぐ人々が途切れなく行き交う歩道の端で、目を閉じ、静かに手を合わせる。
大阪市内に暮らす里みちこさん(74)は事件の6日後、初めて現場となったクリニックが入る雑居ビル前に立った。25人の無念を思い、涙がこぼれた。
翌日も、その次の日も、現場に自然に足が向いた。
「亡くなった人たちを悼み、祈りたい。私の『いのち』のかけらである『時間』をお供えしたい。沈黙の声を聴き、残された思いを生かしていけないだろうかと思っています」
深く見つめた心の痛みや喜びを筆文字で詩に描く詩人で、詩を朗読して心模様を伝える「詩語り」を大阪城公園でほぼ毎朝、25年以上続けている。
自身の父母との別れを詠んだ詩は、大切な人を災害や自殺で亡くした遺族にも響き、遺族支援グループの集まりに招かれることも多い。
誰かを励まそうと、詩を書くわけではない。でも、遺族が亡き人を思いな…
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https://www.asahi.com/articles/ASQ1H5V6JQ1DPTIL002.html
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