孤独は成功のスパイスーー『王様ランキング』に込められた作者・十日草輔のメッセージ

修行を成功させるためのスパイスとなる存在
 デスパーの修行によって強さを手に入れたボッジであるが、その修行は1日を終えると倒れるように眠ってしまうほど過酷なものであった。作中で修行するボッジと対比するように描かれたのは、魔法の鏡との契約によって力を得ようとする「ダイダ」の姿である。

 はじめは自分の可能性に賭けてみたいと話していたダイダであったが、ボッジの存在を意識するあまり魔法の鏡に力を手に入れたいと願うようになる。するとダイダは魔法の鏡によって暗闇のなかに閉じ込められたのであった。

 先の見えない闇のなかで、ダイダは泣き叫び自身の感情をあらわにした。気持ちが落ち着くと大きく息を吐いて床に寝ころび、ダイダは思索に耽(ふけ)る。

 もしかしたら耳の聞こえないボッジもこんな世界で生きているのかもしれないこと。幼いころにボッジと一緒に遊んでいたこと。自分のプライドがふくれ上がりボッジを弱者として見下すようになったことーー。

 過酷な修行にひとりで励むボッジを心配していたカゲに対し、デスパーは「孤独なことも成功のスパイスなんです」と語りかけた。そしてボッジはカゲと距離を取りながら修行に励み、力を手にしたのである。

 暗闇に閉じ込められたダイダも孤独のなかで過ごし、ボッジをはじめとする相手を知ること、そして愚かであった自分を知ることにもつながった。孤独が相手や自分を知る機会になると知っていたため、デスパーは孤独を成功のスパイスと捉えていたのかもしれない。

https://realsound.jp/book/2022/01/post-949301.html