妹が生まれなかったかもしれない世界

「検査を受けていたら、彩英(さえ)は今いなかったかもしれない」

私は、両親から衝撃的なことばを聞いた。ダウン症の妹のことだった。
いま、新型出生前検査=NIPTを受けた人のうち胎児にダウン症などの障害がある
可能性が高いとわかった人の9割は出産を諦めている。
命を選ぶとはどういうことなのだろう。私は、決断を迫られた女性たちに話を聞くことにした。

妹の彩英が生まれた18年前、NIPTのような簡易的な検査はなかった。
私「もし、彩英を生むときにNIPTがあったら受けていたと思う?」
母「あの時の自分なら受けていたと思うよ」
私「どうして?」
母「どうしてって、健康な子がほしいと思ってしまうんじゃないかな。
だからまだそういう検査が一般的じゃなくてよかったと、今の自分は思うけど。
でもその時受けていたら、彩英は今いなかったかもしれない」
父「そうかもしれないね。そこで産むという決断をできたかは自信がないね」

彩英のことをとても大切にしている両親のことばに、私は衝撃を受けた。
そして、両親はしきりに「あの時の自分なら」と言った。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220127/k10013452261000.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220127/K10013452261_2201271048_2201271208_01_02.jpg
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220127/K10013452261_2201271051_2201271225_01_03.jpg