開発責任者「テスラは参考にするが模倣しない」
ソニーのEV、「プレステ」「aibo」との意外な共通点
試作車の初公開から丸2年。販売を本格検討するソニーの真意はどこにあるのか。開発トップである川西常務を直撃した。
――ソニーのスマートフォン「Xperia」は完成品自体でそこまで稼いでおらず、それに使われる部品の1つであるイメージセンサーで稼いでいます。ビジョンエスも、完成車は出すけども、別の部分で稼ぐ可能性はありますか。
ビジョンエスの位置づけは、ソニーブランドをモビリティの世界できちんと示すことだ。
イメージセンサーを車載で使っていただくのは大きなビジネスになる。その“ショーケース”として、具体的な事例として示すのがビジョンエスだ。おそらく今のXperiaも同様の意味合いは少なからずあるだろう。
ひいてはプレイステーションもそうだ。本体は当社のハードウェアだが、ソフトウェアは(ソニーグループのゲーム事業子会社の)SIEも出すし、ほかのゲームソフト会社も出している。ハードウェアを起点として、エコシステムを作っていくことに重きがある。
――プレイステーションといえば、本体は採算割れギリギリの価格で販売し、その後ソフトウェアや月額制有料会員サービスで稼ぐビジネスモデルです。
当社が販売しているaiboでも、買った後にユーザーに楽しんでもらう月額制サービスを提供している。(いずれは)自動車もハードウェアの売り切りで(顧客が)高い、安いと判断する時代ではなくなるのではないか。
(自動車も)顧客が購入した後の楽しみ方を考えるフェーズに移っている。ビジョンエスも販売後に付加価値を提供していき、トータルでビジネスを構築していきたい。顧客にその価値を認めていただけるかどうかがカギになる。
ユーザーとのダイレクトな関係を築き、ユーザー体験を向上し続ける。これはプレイステーションであれ、aiboであれ、ビジョンエスであれ、変わらない。顧客との結びつきに関しては、これまでのソニーの価値観を維持していきたい。
――EV専業で最大手のテスラが、2021年の販売台数が93万台と、ほぼ100万台メーカーになりました。川西さんはテスラをどうみていますか。
テスラも創業から20年近く経っていて、いろいろ苦労してきたと思う。1つの自動車ブランドを立ち上げるにはそれぐらい時間がかかる。そういう意味では決して簡単ではない。テスラを参考例として注視はしているが、模倣する気はない。ソニーとしての新しいやり方を考えていきたい。
EV化のトレンドがなかったら、おそらく当社も参入していない。少なくとも、エンジンやトランスミッションを今から頑張る気にはなれない。
――あらためて、ソニーグループ全体にとって、今回のEV参入表明にどのような意義がありますか。
ビジョンエスは、今手がけている事業領域、すなわちコンシューマーエレクトロニクス、半導体、ゲーム、映画、音楽、金融と、すべての出口になっている。もっともシナジーを出しやすい領域がモビリティだった。ソニーの技術力を示すブランドアイコンにしていく。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29638