【コラム】現状にうんざりの国に「ヒトラー」がやって来た
コラムニスト:William Pesek
2012年5月30日 11:29 JST

現代のアドルフ・ヒトラーが大阪市 を率いるとは誰が予想していただろうか。270万人の大阪市民の大半が 想像もしていなかったことは確実だ。
同市市長の橋下徹氏に対する支持 率は野田佳彦首相の2倍以上だ。大阪市民は42歳の橋下氏による機能不 全に陥った日本政府に対する聖戦を支持している。
日本の保守層は警戒 心を隠さず、同氏を欧州で大虐殺を繰り広げたファシストになぞらえて いる。

変化の激しい世界環境に直面するこの国をめぐって、希薄なこの社 会に身を置く日本人が橋下氏に注目するという事実は多くのことを物語 っている。

昨年3月11日の東日本大震災後、国民の改革への渇望は頂点に達し た。震災前でさえ、政府の方向性が定まらないことを強く感じていた国 民だ。
米国で広がった保守派の草の根運動、茶会党のような原動力が橋 下氏の人気を支えている。
説明責任を一段と重視し、地方分権や新たな 発想を求める橋下氏の姿勢が体制側への脅威となるのはこの時期におい てはもっともなことだ。

急速に支持を集める橋下氏はしばしば「将来の首相」としてメディ アで取り上げられる。
自治体のリーダーとしては国政の指導者に対する 手厳しい批判で知られる東京都の石原慎太郎知事の人気も根強いが、石 原氏はすでに79歳で、若い橋下氏はテレビ映りの良さが際立つ。

だが率直に言って、橋下氏の政策には不明確で気味が悪いものもあ る。同氏率いる「大阪維新の会」の政治塾はナショナリズムが垣間見え る。
君が代の起立斉唱を拒否した公立校の教員に対する処分には過去の 軍国主義を思い起こさせるとの懸念も寄せられており、右翼的な愚行 だ。入れ墨をしている大阪市職員の調査はまさに不気味だ。
確かに暴力 団との関係を連想させる入れ墨だが、2012年の今、職員の誰かが背中に ミッキーマウスの彫り物をしていたからといってそれに対処するのが市 役所の仕事だろうか。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2012-05-30/M4RMQ46JIJUT01