32歳の双子のママ、食事中に吐血…診断結果は「スキルス胃がん」

横浜市で暮らしていたみどりさんが、「体の調子がおかしい」と感じたのは、32歳の誕生日を迎えた2019年8月末のことだった。
 双子の娘がいた。「もっちゃん」と「こっちゃん」。やはり8月に4歳となり、春から通い始めた幼稚園にも慣れてきていた。
 そろそろ外で働きたい。みどりさんは、近くのスーパーでレジを担当するアルバイトを始めたところだった。
 よくせきが出て、止まりにくい。
 接客業なのに、困るな。そう思って、近くの内科でみてもらった。
 医師には、特に異常はないと言われた。
 9月に入ると、おなかや胸のあたりが痛むようになった。子どもたちと遊ぶことが、だんだんつらくなっていった。
 別の病院でも診察してもらった。
 やはり問題は指摘されなかった。
 10月8日の夜。「やっぱり、もう食べられない。先に寝るね」
 みどりさんは、そういって食事をやめ、自宅3階の寝室に引き上げていった。
 2階の居間で、家族4人でたんめんを食べていた。もう少しで食べ終わるころ、みどりさんは気持ちが悪くなり、耐えられずに台所でもどしてしまった。
 こうめいさんは、片付けをしようと台所に立った。すると、もどした食事が一部、黒っぽく残っているのに気づいた。
 「これ、ひょっとして……」
 翌日、朝ごはんを少し口にしたみどりさんは、すぐに気持ちが悪くなり、トイレで吐いた。
 今度は真っ赤だった。
 救急車で近くの病院まで運んでもらい、胃カメラをはじめ、本格的な検査を受けた。
 病院には、埼玉県の実家から、母えつこさん(60)や義理の叔母たかこさん(60)も駆けつけた。
 みどりさんは消化器に異常があるとみられ、おなかや胸に強い痛みを感じていた。病院側の判断で、そのまま入院が決まった。
15日、検査結果を告げられた。
 医師に渡された説明資料に、「4型胃癌(いがん)」と書かれていた。
 いわゆる「スキルス胃がん」だった。
 がんの中でも、治療が難しい。考えられる中で、最も厳しい診断結果だった。

https://www.asahi.com/articles/ASP9V7KW7P9JULBJ004.html

 横浜市のこうめいさん(37)は2020年2月の夜、双子の娘もっちゃん、こっちゃんに、読み聞かせを始めた。
 スキルス胃がんで1月に32歳で亡くなった、妻みどりさんが書いた「だいすきノート」だ。

https://www.asahi.com/articles/ASP9Y6KRZP9LULBJ00G.html?iref=pc_rensai_article_short_1322_article_12