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住宅ローン控除制度改正 控除率下げ・省エネ住宅推奨
2021年12月に22年度の税制改正大綱が発表されました。住宅ローン控除は、年末の借入残高に一定の控除率を乗じた額を、所得税と住民税から一定期間にわたり差し引けるという仕組みです。今回の改正で適用期間が4年間延長され、期限が25年12月31日までになりますが、いくつかの点でこれまでとは異なる改正点があります。今回は主要な改正点とその影響を考えてみたいと思います。
控除率は0.7%に、所得制限も
住宅ローン控除については、その控除率が1%で住宅ローン金利が1%を下回るケースが多いことから、支払い利息以上の給付を国が行っていることになるという批判がありました。また、借入額が大きいほど、支払っている所得税と住民税が大きいほど節税効果が高いことから、金持ち優遇ではないかという見方もありました。
今回の改正はこうした批判を受け、控除率が1%から0.7%に、合計所得金額3000万円以下という所得要件が2000万円以下に引き下げられます。税理士法人アイアセットの代表税理士、石井力氏によると、「改正後の規定の適用を受ける場合、住宅ローン控除の住民税の控除限度額は、その年分の所得税の課税総所得金額等の額の5%(上限9万7500円)に引き下げられる(従前は7%で上限13万6500円)」そうです。
国は新築住宅の省エネ性向上が狙い
また、住宅の種類については次の表のように、ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅が追加されました。
ZEH水準省エネ住宅とは、高断熱外皮(壁紙・窓等)で、発光ダイオード(LED)など省エネ設備を使用し消費エネルギーを減少させ、太陽光発電によりエネルギーをつくることができる住宅です。省エネ基準適合住宅はZEHからエネルギーを作り出す仕組みを除いた住宅と考えるとわかりやすいと思います。
従前であれば、新築ならば省エネ系住宅や認定住宅でなくても借入限度額は4000万円でしたが、今回の改正で3000万円に引き下げられました。また、24年1月1日以後に建築確認を受ける住宅の用に供する家屋(登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものを除く)または建築確認を受けない住宅の用に供する家屋で登記簿上の建築日付が同年7月1日以降のもののうち、一定の省エネ基準を満たさないものの新築または当該家屋で建築後使用されたことのないものの取得については、この特例の適用ができないこととなります。つまり「国は、新築住宅の省エネ性を上げたい」(石井氏)狙いがあるようです。
一方で既存住宅については、控除率は引き下げられましたが、省エネ系の住宅であろうがなかろうが借入限度額2000万円、控除期間10年については従来と変わりありません。
中古住宅の築年数要件の廃止
これまでは、中古住宅を取得して住宅ローン控除を受ける場合、マンション等の耐火建築物は築25年以内、木造等の耐火建築物でない場合には築20年以内であることが必要で、この築年数を超える場合、耐震基準適合証明書が取得できたもの、 既存住宅売買瑕疵(かし)保険に加入したもの、取得の日までに耐震工事を申請して居住の日までに工事が完了したものといった条件が課せられていました。
これらの条件を満たすのは実際には難しいケースが多かったのですが、今回の改正で、この築年数要件が廃止され、新耐震基準に適合している住宅の用に供する家屋(登記簿上の建築日付が1982年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅の用に供する家屋とみなす)であれば2022年1月1日以降に入居を開始した人から適用可能となりました。このことは「既存住宅を買う人、売る人にとっては朗報」(石井氏)とみられます。
今回の改正は課税強化?
今回の改正は課税強化との見方に対して、石井氏は「一般的な給与水準の人にとっては、必ずしも課税強化とは言い切れない」と指摘しています。確かに、控除率引き下げは課税強化ですが、「控除率と金利のバランスを適正化したというのは評価できる改正」(石井氏)といえます。また、日本の住宅断熱性能は国際的にみて極めて低いことから、石井氏は「住宅断熱性能を改善させる意図が反映された改正と考えると一定の評価ができる」とも話していました。