新型コロナウイルスの感染急拡大により、大阪市保健所で感染者数のカウントが追いつかず、
1月下旬以降で1・2万人超が統計に反映されていなかったことが明らかになった。
計上漏れの主要因は医療機関から送られてくるファクスでの発生届。
職員がこれを受けて、政府の情報共有システム「HER−SYS(ハーシス)」に入力しているが、あまりの枚数に処理が追いつかなくなった。
こうしたアナログ手法の限界はかねて指摘されており、「結果は必然」との声も上がる。
「医療機関からの届け出が黒塗りになっていたり、文字がつぶれていたりするケースがある」。ある大阪市幹部はファクス特有の問題に言及し、処理の手間にため息をついた。
感染者の氏名に症状、基礎疾患の有無−。発生届には、ハーシスへの入力に対応した19項目の記載欄がある。
しかし医療機関からのファクスでは、個人情報の誤送信を恐れて一部の項目が黒塗りにされて届くことも。また文字が不鮮明で見にくいケースも多い。
このため保健所の職員が発出元に電話をかけ、内容を聞き取る必要が生じる。
ハーシスには医療機関も直接入力できるが、大阪市によると、保健所を介さない届け出は全体の4割程度にとどまり、残る6割は保健所へのファクス送信
。そこからデータを打ち込むには1件につき10分程度かかるという。
1月下旬以降、大阪市では1日当たりの感染者数が2千〜3千人前後で推移。感染症部門とは別の部署の業務をやめ、入力作業に人員を投入したが、それでも処理能力を超えていた。
今回集計から漏れた分は、すべてファクスによる届け出だった。
ただ医療機関がハーシス利用に二の足を踏むのにも理由がある。
大阪市中央区の内科系クリニックでは、コロナの流行当初からファクス経由で届け出ている。50代の男性院長によると、発熱外来の患者が絶えず来院する中、
ハーシスの画面にアクセスする時間すら惜しいという。「手書きなら診察の合間にも手早く処理できる」(院長)。
「高齢でデジタルに慣れていない医師だとなおさらだ」と語るのは、大阪府医師会の茂松茂人会長。各医療機関にハーシス入力への協力を求める立場だが、
届け出項目の簡略化なども必要だと主張する。
ハーシス側の障害も響いた。アクセスが日中に集中するためなかなか接続できず、夜間にならないと入力できない日が続いた。
重症化リスクが高い患者については発生届から個別に抽出し、漏れによる影響はないとしているが、保健所からの最初の連絡「ファーストタッチ」に最大1週間の遅れが生じた。
:
https://www.sankei.com/article/20220206-QEUIA7PF2BLINLSE7XMJVI2LEE/