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ワリエワ選手どうなる? CAS仲裁人のドーピング専門家が注目した異例ポイント

ドーピング問題で揺れる北京五輪。金メダル大本命の出場なるか? IOCがCASに提訴し判断はフィギュア女子SP前日の2月14日午後にも出るとされますが、注目ポイントを東京五輪でも活躍したアンチ・ドーピングの専門家に聞きました。
■15歳のワリエワ選手に何が? CAS仲裁人の専門家は
15歳のフィギュアスケート女子シングルのカミラ・ワリエワ選手に何があったのか? 試合出場はどうなるのか? 日本アンチ・ドーピング機構の規律パネル委員長で弁護士、CAS(スポーツ仲裁裁判所)仲裁人でもある早川吉尚氏に聞きました。
今回の事態をどうみましたか?
明らかにおかしいとなればIOCなどがCASに提訴するのは当然のことです。というのも今回なぜ選手資格の暫定停止処分が取り消されたのか? ロシア国内の競技会で、体内に禁止薬物が入っていたという結果があるのに「シロ」裁定にできないはずです。
例えば、他の人の尿との取り違え、異物混入ならあり得ますが、とてもまれなことです。
また選手側が証明しなければいけなくて、それは大変な作業で、こんな迅速にできないはずではと思いました。取り消した理由をロシア側が明らかにしなければいけませんが、この速さはちょっと疑わしいということで、IOCが提訴したのはすごく分かる気がしました。
今回の判断の結果の予想は?
一般的にはシロにひっくり返ることは考えにくいです。検体がありますから。個人戦は出場できず、団体金メダルはく奪となる可能性が高いです。
ただ「情状酌量」はあり得ると思います。というのも16歳以下であることが、今回の大きな特徴です。規定で保護される理由は「将来の更生」もですが「15歳の子が自分の判断でやることは考えられない」ためです。
つまり、騙されている可能性がある、として、今後の出場停止期間の「短縮」はあり得ます。
検査結果のタイミングについて
12月25日の検体が2月8日に結果が出る、つまり6週間かかるというのは異常な遅さではあります。新型コロナウイルスの影響で分析作業が遅れたとのことですが、スウェーデンの機関からの検査結果が、いつもたらされたのかも気になります。
結果はIOCなどへの報告義務がありますが果たして2月8日にもたらされたのかどうか。通常ならもっと早く結果は出て、選手村にも入れてない状態です。
通常なら?
一般的には1週間もあればでしょう。もっと早いこともありますが、物質にもよりますし、特に微量だった場合は時間がかかります。
ただ今回、スウェーデンの機関で何が起きていたのか分からないと分かりません。分析作業ですので。
■トリメダジジンはピッタリ
もうひとつ注目したのは、検出されたのが「トリメダジジン」である点です。血流を回復させるものですよね。
実は競技的には…ピッタリだなとの印象を持ちました。過去には中国の競泳選手の孫陽氏からトリメダジジンが検出され大問題になりました。つまり有酸素運動で使用されていたのです。
例えばですが、瞬発力はあるし、身体のバランスが良くて、という状態でも有酸素運動を持続させる力が弱い、という選手がいる場合。まだ若くて、持久力はまだまだで、でも苦しいところを見せられないフィギュアのような競技ではあり得るのではと思いました。
もうひとつ気になるのは、使用は今回だけなのかという点です。例えば“悪魔のお医者さん”と俗に言われる、悪知恵が働く人がいるとして、検査に引っかからないように期間を決めていたとしても、人間というのは、体調が悪いと代謝が悪くなります。そうすると体内に残ることもあり、遅れて出る、こういうこともあり得ますので、今回が初めてなのかどうか、も注目です。
今回、CASが聴取するのが50人という人数を聞いて多いなと思いました。ロシア関係者もですがIOCも本気でしょうから、それだけ関係者を多く出しているのでしょう。
世界が注目する結論ですからギリギリまで時間がかかる可能性があります。
■ロシアの薬局へ行ってみた
今回検出された禁止薬物トリメタジジンとは?モスクワ市内の薬局へNNNの記者が行ってみると、簡単に手に入ることが分かりました。
トリメタジジンはありますか?
 店員「あります」
いくら?
 店員「687ルーブルです」
日本円でおよそ1000円。狭心症の治療などで使用されるトリメダジジンは、モスクワ市内の薬局では普通に買うことができました。
一方で禁止薬物に指定された薬が15歳のワリエワ選手の検体から出たのはナゼなのか。スポーツの祭典では真相解明が求められています。