2月13日

大使館の人に叱られた。往復ビンタされた。

非常に厳しい口調で退避を勧告された。まだ戦争は起きないと思っているんですか、そこオデッサですよね、もうロシア軍はすぐそこまで押し寄せてるんですよ、
砲弾が撃ち込まれてはじめて信じるんですか、でもそのときは死ぬ時ですよ、ウクライナ人と一緒になって戦うんですか、
調査によるとオデッサでも市民の半数が「いざ戦争になったら武器をとって戦う」と言っていますよ、戦うんですか、(いや逃げます)、じゃ逃げてください。もう飛行機もどんどんなくなってますよ、逃げたいと思っても逃げられなくなってしまいますよ、
電話も通じなくなるかもしれませんよ、大使館とも連絡がつかなくなりますよ、なんで逃げないんですか。(ハードルとして現実感を異にする妻の説得ということがひとつあります)
奥さんの命が大事なら説得してください、二つにひとつです、奥さんの命を守るために説得するか、それともここに残って骨をうずめる覚悟をするかです。

私は愚鈍なので有効な反駁のひとつも口をついて出ず、サンドバッグ状態でビンタを8往復くらい食らい続けていた。電話を切ったら膝がガクンと落ちた。

そうして筆弁慶の私が今になってこのブログ上で(相手に聞こえない声で)いや違うそれはそうじゃないこれはこうだと反論を開始するわけですか。卑劣だね。
@それならこの点をどう説明するんですかAそれでもロシアが無差別攻撃をするとは思えない=ウクライナ全土が「赤い」というのは過ぎた単純化であるB私たちは大丈夫だ。

シンプルにシンプルに記したい。正直この話題はしんどい。@それならこの点をどう説明するんですか。つまり、当のウクライナ政府が今もってロシアによる早期侵攻の線を否定していることを。
アメリカは超すごいインテリジェンスをもっているから遥か離れた露ウ国境の情勢についても誰よりよく知っていて、
一方、当のウクライナは8年間戦争をしている同じ言語を話す隣国ロシアについてロクな諜報活動ができていなく、危機の実相が全然見えていないというわけか、そんな話があるか。
そこで「ウクライナは魂胆あって糊塗しているのだ」と主張するなら、「米国こそ魂胆あって誇張しているのだ」とどうして言えない。
オデッサが脅威にさらされているというなら、なんで今げんにオデッサの街中でウクライナ軍のプレゼンスが高まっていないのだ。

Aそれでもロシアが無差別攻撃をするとは思えない。砲弾が飛んでくるまで信じない、信じたときにはもう死んでいる、それはどういう想定なんだ、
やっぱりロシアの軍艦が洋上からずどーんと街に撃ち込んでくるみたいなイメージなのか。そもそもロシアの今の国境緊張の創出はどういうモチーフによるものだったか。
よくプーチン論文が引用されるが、「ひとつの民族」つまりロシアと一体であるべきウクライナがロシアを離れてヨーロッパに抱き込まれようとしているからそれは許さぬ、ということでこの全てが行われている。
ロシア側のレトリックでは14年以降一貫して批判否定愚弄されているのはウクライナ政権(「米の傀儡」)であって、ウクライナ国民ではない。
ウクライナの市街を破壊し無辜を殺戮すれば、ロシアは破滅的な自己矛盾をきたす。ウクライナ国民の感情は決定的にロシアから離反し、ロシア国民の感情さえプーチンから離反する。あまりに利がない。
あまりにも。All is fair in war、戦争にテンプレートはない、プーチンの頭の中は誰にもわからない?「プーチンのあたまのなか」言説の嘘については下のどっかに書いたから繰り返さない(「脳髄」で記事内検索してください)。
能力的にはすべてを行い得る、それだけの兵力火力が集まっている、とはいうものの、では突如ウクライナに核ミサイル100発撃ちこまれるということがあるでしょうか。
「そうはいってもさすがにそのようなことにまではならないだろう」という条理による限定は、一切無効なのでしょうか。もちろん否。
そうして、無差別絨毯爆撃とかいった可能性を排除するなら、ウクライナ全土が「赤い」(日本外務省による色分け、危険度レベル4(最高)、ただちに退避すべき)などということがあるわけはない。

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