笹川平和財団 畔蒜泰助主任研究員
「この問題の起点は2008年にブカレストで開かれたNATOサミット。この時に当時のブッシュ政権がウクライナとグルジア(ジョージア)のNATO加盟のプロセスを始めると定義したことだ。これに対しブッシュ政権のライス国務長官や、当時のロシア大使で現在のCIA長官ウィリアム・バーンズ氏など、ロシアを知っている人たちはみんな反対だった。彼らはウクライナがロシアにとって、どういうものなのかを知っているので、ロシアがどう反応するか分かっていた。バーンズ氏は2019年にメモワールを出しているんですが、当時政府に対し、影響について話していたことが出ている。それを読むと、その後のクリミア併合や東部介入についてバーンズはほぼ予想している。もちろん併合や介入は許されないが、問題をここまでこじれさせた一端は当時のアメリカの政権にあるとも言えると思う」
実は1990年の2月9日、モスクワで米露の会談があった。そこでアメリカのベイカー国務長官は言った。「アメリカがNATO枠内でドイツに駐留し続ける場合にはNATOが東方へ1インチたりとも拡大しないという保証が重要」。これに対しロシア・ゴルバチョフ書記長は「全般的に同じ考え」と返したという。こういった会話が記録に残っているにもかかわらず現在のNATOの東方拡大は“約束違反”だとガルージン大使は言う。

ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使
「約束の乱暴な違反ですよ。これは口頭の約束で、書面になっているものではないが、あの当時ソ連の指導部とロシア連邦の指導部は、先方(アメリカ)は淑女と紳士だと思いまして“紳士的合意”と受け止めていましたが、(アメリカには)紳士も淑女もいなかった」
https://news.yahoo.co.jp/articles/243c2ff49f97b88421199f2152ab1e7d1bec4c58