過去10年間では、在日ベトナム人は10倍以上に増えている。出稼ぎのため、実習生や留学生として来日するベトナム人が急増したからだ。しかし、長く続いた日本への“出稼ぎブーム”にも、最近になって変化の兆しが見える。コロナ禍によって実習生らの新規入国が止まっている一方で、日本から去っていくベトナム人が相次いでいるのだ。
30万円」といえば、ベトナムの労働者の月収の10倍にも相当する。にもかかわらず、なぜ彼らは帰国を希望するのか。
「実習生は斡旋業者に支払う手数料で、100万円近い借金を背負って来日します。だけど日本で3年働けば、借金は返済でき、ある程度の貯金もできている。だから『もう日本は十分』と考えるのです。
実習生の暮らしは仕事に追われ、楽しみが少ない。20代や30代の若者にとってはつらい生活です。とりわけ建設関係は仕事が厳しいですからね」
しかも日本での仕事は、彼らが想像していた以上に大変だ。新興国ならではの、貧しくてものんびりとした環境で生まれ育った若者には、忙しく時間に追われる日本の暮らしは戸惑いも多い。そこにコロナ禍が追い打ちをかけ、ベトナムへの帰国を望む者が増えている。ジャンさんは言う。
「コロナはベトナム人が日本を離れるきっかけかもしれませんが、根本的な理由は他にあります。実習生に限らず、お金に余裕のある人ほどベトナムに帰りたがっている。僕自身もコロナが落ち着いたら、ベトナムへ戻ろうと考えています」
東京都内のIT系ベンチャー企業で働いていたグエン君(20代)は、今年4月に会社を辞めてベトナムに帰国した。2週間に及ぶ帰国後の隔離費用を含め、28万円ものチャーター便チケットを購入してのことだ。出発前、グエン君はこう話していた。
「チケット代は高いし、隔離期間中はホテルから出られません。でも、できるだけ早くベトナムへ帰りたい」
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