飯田)結局、緊縮で行くと、経済全体が縮小均衡に陥ってしまう。見かけ上はいい数字が出るかも知れないけれど、「全体として貧しくなっていないか」という危機感があるのですね。

本田)最大の問題は「賃金が上がらない」ということです。なぜ賃金が上がらないかと言うと、売れないから上がらない。投資もしない。だからまた売れない、その悪循環がずっと続いているのです。

飯田)売れないから賃金が上がらない。

本田)ただ、アベノミクスのおかげで、物価が毎年減少して行くという状況は、もうありません。脱出しました。ですから、かろうじてプラスにはなっているのです。

本田)貨幣にはいろいろな機能があります。「ものを買う」というのは、いちばん重要な機能なのですが、もう1つ、「貯めておく」という機能があります。10年〜20年先のために1000万円を貯金する。これも重要なお金の機能です。その貯蓄機能が発揮されすぎてしまっている。デフレですから、ものが安くなって行くので、10年後にはもっと安くなっているだろうと。だからいま誰も買わないのです。

飯田)貯めておいた方が得だろうと思ってしまう。

本田)でも、それだと経済が破壊されるのです。誰も買いませんから。お金というのは、そもそも単なる紙や金属ですから、使わなければ意味がない。「使ってくれ」という人間のマインドの変化、気持ちの変化。これを経済学者のケインズは「アニマルスピリット」と呼んでいますが、お金を使って、新しいプロジェクトをやってみようと。それで生産性を上げてみようということです。

飯田)アニマルスピリット。

本田)失敗するかも知れません。しかし、やらないと経済はよくならないのです。日本人はもともとアニマル精神があり、世界に冠たる技術を持っていましたので、それをもう1度、日本に取り戻そうということで始まったのが、アベノミクスです。
https://news.1242.com/article/343385
コロナ後は「アベノミクス・バージョン2」で行く

本田)インフレ率はまだ2%の物価安定目標に到達していませんが、労働仕様はよくなって、就業率は職種を選ばなければ、必ず仕事は1人に1つあります。学生の内定率もほぼ100%に近いのです。明らかによくなっています。それが、いまはコロナ禍で隠れていますけれども、コロナが収束すれば、再びアベノミクスをバージョンアップして「アベノミクス・バージョン2」で行きましょう、というのがこの会で話され、とても有益だったと思います。


飯田)「財政と金融の両輪で」と先ほどおっしゃいました。先ほどの物価の話で、「物価が上がって来ているのだから、財政をふかしたりすれば、もっとインフレになってしまう」と言う人がいるのですが、その心配はありませんか?

本田)全然上がって来ないのです。上がって来ないから心配しているのです。

飯田)むしろ、そちらが心配。