──トッドさんの新著『彼女たちはどこからきて、今どこにいるのか?──女性史の素描』(未邦訳)が2022年1月にフランスで刊行されました。この本では「第三波フェミニズム」やジェンダー理論がかなりきつく批判されています。

あなたに言わせれば、そうしたものは男女の間に戦争を起こそうとするものであり、現実離れしたイデオロギーだとのことです。そんなことを言うと左派のお友達が離れてしまいそうです。どうしてそんな本を書こうと思ったのでしょうか。

おっしゃるとおり、私は第三波フェミニズムと呼んでいますが、あの敵愾心の強いルサンチマンの運動に辟易しているところがあるのはたしかです。そこはおそらく私の世代の男性たちと同じです。私の世代は徹頭徹尾フェミニズムでしたし、私の社会環境でもそうでした。

私が驚いたのは、このフランスに英米流のフェミニズムに似た、敵愾心の強いフェミニズムが出現したことです。米国のフェミニズムは男女を対立させ、英国のフェミニズムは男女を分離しますが、フランスのフェミニズムの特徴は男女が同志の関係にあるところであり、そこは世界から称賛されていたのです。

ただ、私は第三波フェミニズムの批判をしたかったというより、何が起きているのかを知りたかったのです。研究者として、人類学者として、歴史家としてね。

https://news.yahoo.co.jp/articles/dc8e75667e8030819675fc5be5b86fa532807546