宇宙に存在するブラックホールは「4000京個」

あまりに大きな質量で時空がゆがみ、光すら脱出することができない特異点となっている天体がブラックホールです。
イタリアの研究機関であるInternational School for Advanced Studies(SISSA)の研究チームが、観測可能な宇宙に存在する恒星ブラックホールの数を計算し、その数が4000京個にのぼると報告しました。

地球が存在する天の川銀河に属する星は、およそ2000億個といわれています。その中には地球のように小さな星もあれば、太陽の100倍以上の質量を持つような巨大な星も存在します。
割合でみると、太陽よりも質量が小さな星が全体の80%ほど、太陽と同等の質量を持つ星が10%ほど、太陽よりも大きな質量を持つ星が10%ほどになります。

このように、宇宙の単位体積当たりにどのような質量の星がどのような頻度で存在するのかを表わす関数を「星質量関数」と呼びます。
質量の高い星は寿命が短く、逆に質量の小さい星は寿命が長いので、星質量関数は時間とともに大きく変化します。また、星は宇宙から無限に生成されるのではなく、水素原子などで構成されるガス雲から生まれます。
ガス雲はもちろん有限量しか存在しないので、銀河中に作られる星の数は決まっています。そのため、星質量関数から天体の数を推測することができます。

そして、ブラックホールについてもこの星質量関数を当てはめることは可能。ただし、巨大な質量を持つ星が爆発することで生成されるブラックホールは誕生まで非常に時間がかかること、そしてブラックホールは消滅するまでに果てしない時間がかかること、
時としてブラックホール同士が合体する可能性もあることから、通常の天体とは星質量関数が大きく異なります。

SISSAの研究チームが取り組んだのは、ブラックホールの質量分布を明らかにし、ブラックホールの星質量関数を特定すること。
どれだけの質量のブラックホールがどれだけ存在するのか、そしてその存在割合が時間とともにどのように変化するのかを示すことで、宇宙や銀河への理解がさらに進むことになります。

SISSAの研究チームが専用のソフトウェアで計算を行ったところ、太陽の5倍〜50倍の質量を持つブラックホールの数は時間が経ってもほとんど変化しないことがわかったそうです。また、ブラックホールの合体する確率はこれまでの観測結果と一致することも判明しました。
そして、ソフトウェアで分かった計算結果からブラックホールの数を計算したところ、地球を中心に半径465億光年の観測可能な宇宙に含まれる恒星ブラックホールの数は40×1018個、すなわち4000京個もあるという結果になったと研究チームは報告しています。

なお、この4000京個のブラックホールをすべて足し合わせると、宇宙に存在する通常物質の総重量の1%弱が含まれていることが判明したそうですが、実際はブラックホールの質量の多くが暗黒物質で構成されており、
通常の物質がブラックホールの質量を構成する割合は全体の15%ほどだそうです。
https://gigazine.net/news/20220220-black-hole-in-the-universe/