ネコは勝手気ままで、イヌは忠実、というステレオタイプは本当だろうか。
「そんなことない!」と言いたいネコ派もいるだろうが、京都大などのチームが、実験でそんな傾向を裏付けてしまうかもしれない結果を出し、
2021年に科学誌に発表した。

京大に所属していた千々岩眸(ひとみ)さん(現・大阪大特任研究員)らは、ネコやイヌといった人とともに暮らすコンパニオンアニマルが、
人の行動や社会をどう認識しているかなどについて研究している。そこで、飼い主が不利益を被っている状況で、ネコがどう振る舞うかを調べることにした。

 実験には、飼いネコ36匹を集めた。
ネコは、飼い主とその左右に1人ずつ計3人が一列に座った状態と向き合う。飼い主はふた付きの容器を持っている。

 そこから、飼い主が容器のふたをなかなか開けられないしぐさをして、片方の人(A)に助けを求める。
Aは開けるのを手伝ったり、助けを拒んだりした後、もう一方の関係なかった人(B)と2人同時に「せーの」でネコ用おやつを差し出す。

 果たしてネコはどの人に先に向かうことが多いのか。
偏りがないように、AとBの役割や左右の配置はランダムに入れ替え、各ネコが4回実験にトライした。

 すると、ネコは手伝った人、拒んだ人、関係ない人それぞれにほぼ等しく向かう傾向があった。
今回の実験の条件では、ネコは飼い主が冷たい仕打ちを受けていても、気にしていないようだ。

 実は千々岩さんらは、ネコの成果を発表する6年前、イヌで同じ実験をし、飼い主に冷たい仕打ちをした人を避ける傾向があったと発表している。
イヌは自身に直接関係なくても、他者の振る舞いを理解し、評価する能力があることを示した。

 千々岩さんはネコについて「イヌと同じか、まったく気にしないか、という両極端な仮説を立てて実験しましたが、見事に気にしませんでしたね」と話す。
実験でも、イヌがおとなしく飼い主らのしぐさを見ているのと違い、ネコはその場にとどめておくのにも苦労したという。

 論文にまとめる際も、通常の科学研究では何らかの「差が出た」結果を示すことが多いが、ネコは「差がなかった」というデータだったため、
投稿先に理解してもらうのが難しかったという。千々岩さんは「ネコとイヌは祖先の習性や、人の伴侶になった経緯が異なるので、
社会性にも違いが出ているのかもしれません」と話す。

https://www.asahi.com/articles/ASQ2H55QDQ1VPLBJ00D.html