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死屍に鞭打つ
死体を鞭で打って辱める。亡くなった人を非難することのたとえ。

[使用例] 社会に害毒を流せし悪人に対しては、大おおいに其その死屍に鞭うちうって、以て
徹底的膺よう懲ちょうの刑を加うべしである[宮武外骨*裸に虱なし|1920]

[使用例] 筆者自身〈略〉死屍に鞭うつの譏そしりをあまんじて受けるとも書き添えている
[荒正人*漱石・?外・龍之介|1954]

[由来] 「史記―伍ご子し胥しょ伝」に出てくる話から。紀元前六世紀、春秋時代の中国で
のこと。楚その国に仕えていた伍子胥は、父と兄を楚の平王に殺され、亡命して呉ごという国に
仕えることになりました。仇討ちのため、すぐにでも楚と戦いたかった伍子胥ですが、呉の国情が
許さず、時機を待ち続けます。そして一六年後、呉軍を率いてついに楚へと攻め込んだ伍子胥
は、都を占領。しかし、平王はすでに亡くなっていました。すると伍子胥は、平王の墓を暴き、
「其その尸しかばねを出し、之これを鞭うつこと三百(その死体を引きずり出して、三〇〇回、
鞭で打ち)」、積年の復讐の念を晴らします。しかし、その行為は旧友からでさえ、あまりにもひ
どいと非難されたのでした。

[解説] ?伍子胥のすさまじいまでの復讐の念に、背筋が凍るようなエピソード。その気性の
激しさがあだとなり、この後、彼は有能であるにもかかわらず、次第に呉王の信頼を失っていき
ます。そして、最後は自殺を命じられ、呉の滅亡を予言しながら、死んでいったのでした。
?亡くなった人は何の反論もできませんから、その行為を非難するのは、公平ではありません。
その人がよほどのひどい行いをしていた場合か、非難する方が道徳的でない場合に使われる
故事成語です。

〔異形〕死者に鞭打つ/屍しかばねに鞭打つ。