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3歳以上の猫 8割が歯周病…健康寿命を守る猫の歯みがきトレーニング

人間同様、ペットの健康寿命にも大きく関わってくるのが“歯の健康”。ところが犬と比べると、猫の歯みがきを行っている飼い主は依然として少ないといわれる。

 一般社団法人日本ペット歯みがき普及協会では、犬だけでなく猫の歯みがき習慣を普及すべく、さまざまな試みを実施。2月18日には「自宅でできる歯磨きが苦手な猫のための簡単歯磨きセミナー」をオンンラインで開催。100人以上の飼い主と125匹の猫が歯みがきトレーニングに参加した。

 セミナーではまず、同協会理事を務める、かまくら げんき動物病院院長の石野孝獣医師が、猫の歯周病・歯肉口内炎について解説。
とくに痛がる様子がないようなら、唾液腺マッサージと合わせて、段階ごとに歯みがきトレーニングを始めていきたい。

 犬猫とのコミュニケーションを図るプロの視点でアドバイスをしたのは、動物トレーナーの須崎大氏。須崎氏は「人の手は気持ちがいいと覚えてもらうこと」「お腹やわきの下など、血管やリンパが通る大事な部分を触らせてくれるようになるまで信頼を築くこと」「歯ブラシやオーラルシートをいきなり使うのではなく、まず猫に匂いをかがせるなどして慣れさせること」など、歯みがきをさせてくれるようになるまでの接し方を伝授。

「少しでも嫌がったらやめる」「できたらほめる、ご褒美をあげる」を心がけつつ「指で触る」から「オーラルシートで軽くこする」、そして「歯ブラシ」へとステップアップを目指す。

 ペット用品の開発・販売などを手がけるトーラス株式会社の赤津徳彦代表によると、オーラルシートは薄く指に巻いて、まずは軽くこするだけでもよいとのこと。食事に混ぜるタイプのケア用品などもあるので、猫の気分や段階に応じて使い分けるとよい。ちなみに、人間の歯ブラシと猫用では、大きさや長さだけでなく毛の柔らかさや太さも異なるので、人間用での代用は避けた方がよいとのこと。

 石野獣医師は「人間の“8020運動(80歳で20本の歯を残そう)”にならい、猫も15歳で30本=“1530”を目指しましょう。猫の永久歯は上下合わせて30本なので、本来であれば15歳まですべての歯がそろっている状態が望ましい。なるべく早い時期から少しずつゆっくりと段階を踏んで慣れさせていきましょう」と話した。

 飼い猫は長生きしやすい一方で、高齢化によりさまざまな病気のリスクも上がる。健康寿命にも大きく関わる口腔環境。人間と猫が心地よさを感じるスキンシップとして、オーラルケアを習慣化していきたい。

 人間と違い猫の口内はアルカリ性のため猫に虫歯は少ないが、一方で歯周病になりやすく、ある統計では3歳以上の猫の80%が歯周病を抱えているという。「よだれが増える」「食欲が落ちる。空腹そうなのに食べない」「口臭が増える」「グルーミングをしなくなるので毛がパサパサ」といった症状がある場合は、歯周病などの口腔トラブルにより、痛みや違和感を感じている可能性がある。

 また、歯周病とは異なり、主に口の奥側に広がる歯肉口内炎では、感染症や免疫の低下(カリシウイルス、猫エイズ、ウイルス性白血病)が疑われることもある。多頭飼育の場合はとくに罹患リスクが高まるので注意が必要だ。

唾液腺マッサージの手順

 しかし、突然、猫に歯みがきをしようとしても嫌がられるのは必至。慣れない作業で怖がらせたり、痛がらせてしまえば、歯みがきの道はさらに遠のいてしまう。そこでまず勧めたいのが、歯周病の予防にもなるという、だ液の分泌をうながすマッサージ。セミナーでは、石野獣医師が猫の口周りにある4つの唾液腺を、顔の上から優しくもみほぐす「唾液腺マッサージ」のやり方を紹介。

1.最初に、猫の顔の上から唾液腺の“出口”(上あごの奥のほうの大きな歯のあたりと下あごの犬歯のあたり)を各20秒ほど優しくマッサージ

2.4つの唾液腺をマッサージ。目の下の頬骨腺→耳の下の耳下腺→下あごのエラ部分にある下顎腺→舌の付け根付近にある舌下腺を下あごの皮膚の上からマッサージ。

3.最後に唾液腺の流れに沿って出口(鼻先の方向)へ向かってマッサージ。以上を、食後に2分ほどかけて行うとよいとのこと。

 石野獣医師は「いきなり歯ブラシを口の中に入れようとしても嫌がるでしょうし、口腔トラブルのある猫は口の中を触らせてくれない。まずは、スキンシップの一環として、日々の食後などに優しくマッサージしてあげてください」とアドバイス。