依然として人口比で全国トップの感染者・死亡者を出しつづけている大阪府。医療現場も保健所も逼迫し悲鳴があがりっぱなしだが、そんななか、最高責任者である吉村洋文知事は先週末19日、なんとバラエティ番組に出演。しかも、そこでまたも大阪の異常な状況をごまかす詐術を用いたのだ。

 吉村知事が生出演したのは、19日の午前9時25分から放送された読売テレビ『あさパラS』の2時間スペシャル。MCはお笑いコンビのハイヒールが務め、パネリストとしてハイヒールと同じ吉本興業所属のヤナギブソンや天才ピアニスト、関西ジャニーズJr.の福本大晴、元厚労官僚の中野雅至・神戸学院大学教授や元財務官僚の山口真由が出演。ニュースも扱うが、読売テレビのHPでも「バラエティ」に分類されている番組だ。

  
 

吉村知事は今月27日におこなわれる大阪マラソンの一般ランナー部門について開催中止を決定したが、番組では、この決定に対してホリエモンこと堀江貴文が〈やる気まじなくなるよね。こういう適当な対応されると。単に自分の政治的生命の先行きしかみてねーよな。吉村チキンっすね〉とツイートした件を紹介。このホリエモンの投稿について、吉村知事は「やっぱり僕自身も主催者側なんで、すごいやりたいんです。本音はやりたい」「ただやっぱり、病床がこれだけ逼迫して医療従事者もものすごい大変ななかでやられてるなかで、2万人の方が一斉に会して、そこからまた感染が広がって高齢者に広がると、その人たちの命も守りにくくなってしまうし、さらに医療も逼迫するので」などと語った。

 そもそも、ホリエモンのツイートはコロナ軽視のイチャモンにすぎないが、だからといって吉村知事が中止したのは褒められるような話でもなんでもない。人口比感染者数・死亡者数が全国トップという最悪の状況下で2万人の一般ランナーを走らせようというほうがどうかしており、中止するのは当たり前の話だ。だが、リンゴが「(吉村知事は)そんな考えてるのに『単に自分の政治生命の先行きしかみてねーよな』(と言われるなんて)」と擁護すると、吉村知事も「こういう批判受けるのも、知事の仕事なんかなあと思って。やれないのは事実ですから」などと発言。“批判を受け止める殊勝な俺”という風を吹かせはじめたのだ。

 もはやウンザリするような展開だが、さらに閉口したのはこのあと。吉村知事が「マラソン、僕もやりたいんですけど、チキンと言われながらもですね、それはでももう……」と言うと、リンゴが「(チキンだと)認めたってこと?」などとツッコミ。吉村知事が「うん、それはチキンと言うか、まあ……チキンを認めたというか」と口にしたことで、パネリストたちは「認めてるよ、認めてるよ!」と囃し立て、スタジオはどっと湧いたのだ。

 繰り返すが、いま大阪では全国最悪の医療状況に陥り、入院すべき人が入院できず、自宅や施設で亡くなっていっているのだ。そんな最中に、首長がバラエティ番組に出演し、お笑い芸人やアイドルたちと「チキンだと認めたかどうか」などというくだらない話題でキャッキャとはしゃぐ──。挙げ句、このあと番組では、吉村知事が大阪・関西万博の目玉にしている「空飛ぶ車」を取り上げ、「こういう夢がある話、いいですよね」(ハイヒール・リンゴ)だの「楽しみ」(ハイヒール・モモコ)だのと盛り上げ、吉村知事生出演コーナーは締めくくられたのだった。この番組、吉村知事の出演時間はなんと40分にも及んだ。

 これまでも在阪テレビ局は吉村知事のコロナ失策に対する批判をほとんど展開せず、それどころか揃いも揃って吉村知事を出演させては「さすが吉村さん!」「吉村知事はよくやっている」などというイメージを醸成してきた。その結果、どれだけコロナ対策で失敗しても支持率が下がらないと吉村知事は高をくくり、またも全国最悪の状況に陥らせている。

 しかも、この『あさパラS』を制作・放送しているのは、吉村応援団と化している在阪メディアのなかでも急先鋒である読売テレビ。読売テレビは昨年末、大阪府と「包括連携協定」を結んだ読売新聞の系列であり、今年の元旦に吉村知事が松井一郎・大阪市長や橋下徹の3人で出演した毎日放送の番組が1月下旬に問題になった以降も、『情報ライブ ミヤネ屋』や『ウェークアップ』、『かんさい情報ネットten』などの数々の番組に吉村知事を出演させてきた。ようするに、吉村知事と協力関係にあると言っても過言ではない関係だ。

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