NATO(北大西洋条約機構)で行われている核兵器シェアリングとは、アメリカ軍の保有するB61戦術核爆弾を非核保有国である同盟国が提供を受けて使用する協定です。提供を受けるといっても管理し使用する権限はアメリカが握ったままで、提供された国の意志で自由に使用することはできません。
核抑止力が目的ではない
核兵器シェアリングで渡されるB61戦術核爆弾は戦闘機に搭載される自由落下型の核爆弾です。距離が遠く防備も厚い敵国の首都をいきなり直撃できるようなものではありません。射程の短い戦術用途の核兵器であり、目の前に迫って来た敵の侵攻部隊に対して使用される兵器です。実はこれは核抑止力の為のものではないのです。全面核戦争下で双方が戦略核兵器をお互いの都市と基地に撃ち込んだ後で、戦術核兵器を用いながら地上侵攻する状況での使用が想定されています。
核の共有とは罪の共有
同盟国に核抑止力を分け与えることが目的ではないとしたら、核兵器シェアリングの意図は何なのでしょうか。敵国を攻撃するだけならアメリカだけでやってしまっても別に問題が生じません。しかし敵の侵攻部隊がNATO同盟国の国土に深く進撃し、この侵攻部隊を核攻撃で排除する場合に大きな問題が生じてしまいます。アメリカが同盟国の国土を核兵器で焼くことを意味するからです。これではアメリカが同盟国の国民から恨まれてしまう。ゆえに核兵器を味方の土地で使用した罪をアメリカだけに背負わせずNATO全体で共有するために、同盟国が自分の手で自国の国土で核兵器を使用するのです。あるいは親しい隣人、友人の国土を。東西冷戦当時、最前線の分断国家だった西ドイツに至っては目の前の敵に先制して使った場合でもそれは東ドイツであり、攻勢の場合であってもかつての同胞を核兵器で焼かねばなりません。
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181220-00107827