アメリカ・ダートマス大学の研究チームが英語圏最大のソーシャル掲示板・Redditの投稿から精神疾患を検出するAIを開発しました。

WHOによると、人口転換の影響を受けて精神疾患を抱える人の割合は2007〜2017年の10年間で13%増加しており、青少年の20%がメンタルヘルスの問題を抱えて生きています。しかし、経済的事情や社会的烙印、医療サービスの認知度の低さなどから、メンタルヘルスの問題について助けを求める人はごく限られています。

今回ネット掲示板の投稿から精神疾患を検出するAIを開発したXiaobo Guo氏によると、デジタルなスクリーニングで潜在的に精神疾患を抱えている人を検出できればメンタルヘルスの問題の治療率を改善できると考えたとのこと。
そして、人々が行動を簡単に把握できるような自らデータを公開してくれるという点で、スクリーニング対象として適しているとされたのが、SNSでした。今回の研究が多種多様なSNSの中からRedditを選んだ理由は、5億人近いユーザーがいることや幅広いトピックについて議論が行われていることが理由です。

研究チームは大うつ病性障害・不安障害・双極性障害などの感情に対して明白な影響を与えるタイプの精神疾患に焦点を当て、これらの精神疾患のいずれかを抱えていると自己申告したユーザーと、そうした精神疾患を抱えていないというユーザーの2種についてデータを収集。
各投稿から読み取れる、喜び/怒り/悲しみ/恐怖/無感情などの各種基礎感情や、これらの基礎感情を組み合わせた複合的な感情をAIで分析できるようにしました。

研究チームによると、各投稿間における感情の移り変わりには、その人の抱えている精神疾患に応じて「パターン」があるとのこと。研究チームは前述したAIが読み取った感情の移り変わりのパターンを精神疾患を抱えている人の結果と比較することで、特定ユーザーが精神疾患を抱えているかどうかを検出できるようにしました。

今回の研究手法は「感情」を分析対象としている点が特異的とのこと。AIを使った既存のスクリーニング研究の多くは「投稿の内容」を分析対象としており、例えば投稿の内容を解析するAIが「新型コロナウイルス感染症」という単語が「悲しみ」や「不安」と関連していると学習した場合、
新型コロナウイルス感染症についての研究結果を発表した研究者は悲しみや不安を抱えているものだと判定されています。今回の手法は感情に焦点を当てているので、そうした誤診断とは無縁です。

研究チームは今後、同様の研究を続けて感情の遷移パターンの明確化を目指すと語っています。

https://gigazine.net/news/20220304-ai-detects-mental-disorders-from-sns/