忍び寄るスタグフレーションの影（NY特急便）：日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0409I0U2A300C2000000/
新石油危機――。米経済誌バロンズは現在の原油価格急騰を、石油ショックでインフレと景気後退を招いた1970年代の危機になぞらえた。ガソリン高などを通じて消費を直撃し、景気後退を招く懸念が強まっているという。
1バレル119ドルに上昇すれば1年前から2倍になる。米調査会社データトレック・リサーチの共同創業者ニコラス・コラス氏によると、原油価格が1年間で2倍に上昇したのは1990年、2000年、08年の3回で、いずれも景気後退を招いたという。
3日には西部カリフォルニア州でガソリン価格の平均値が米国史上初の1ガロン5ドルを突破した。車社会の米国でガソリン価格の高騰は生活や消費を直撃する。
景気悲観派で知られるエコノミストのゲーリー・シリング氏は「ロシアのウクライナ侵攻前から消費者信頼感は低下傾向にあった」と指摘する。ミシガン大学消費者態度指数は2月に62.8と11年10月以来10年4カ月ぶりの低水準だった。同氏は、消費者心理の悪化に加え、金融市場で景気後退に陥る兆候が表れつつあると指摘する。
「逆イールドカーブ」だ。米国債利回りで2年物が10年物を上回る現象が起こると、その8〜10カ月後には景気後退に陥るのが通例だ。この長短金利差は急激に縮小しており、「逆イールドになるのは時間の問題だ」とシリング氏は懸念する。
景気後退までではなくても景気の減速は免れないとみる声は増えている。
「米国は現在のところ物価上昇を伴う景気拡大を続けているが、インフレが制御不可能になるかどうかが問題だ」。エコノミストのエドワード・ヤルデニ氏は指摘する。「エネルギー価格の上昇が続けば欧州で景気後退に陥り、米景気にも打撃を与える」とみる。「物価高騰は個人消費を鈍化させ、スタグフレーションにつながる可能性が高い」と懸念する。
