「男嫌いは出ていけ!」 韓国の若い男性のあいだに巻き起こる「反フェミニスト」運動

韓国の首都ソウルで女性たちが性的暴力や性差別に抗議する集会を開くたび、若い男性の集団が姿を現す。
彼らの大半が黒い服に身を包んでおり、抗議する女性たちを見下すかのようにこう繰り返す──「どすん! どすん!」。

彼らの言う「フェミニストの醜いブタども」が、歩くときに立てる足音を茶化しているのだ。

「男嫌いは出ていけ!」

若い男性たちはそう叫ぶ。

「フェミニズムは精神障害だ!」

町なかであれば、そうした声を耳にしても非主流派の極端な主張にすぎないと簡単に切り捨てられる。
しかし、オンラインではそうはいかない。
反フェミニスト感情は増幅されて無数の聴衆のもとへ届き、韓国社会と政治を悩ませている。

反フェミニストを掲げる男性活動家たちはわずかでもフェミニズムを察知すると、ことごとく標的にする。
彼らは「男嫌いを吹聴している」と大学の女性講師を非難し、授業を中止に追い込んだ。
さらに、東京オリンピックで3つの金ダルを獲得したアーチェリー韓国代表選手アン・サンの短髪を誹謗中傷した。

企業に対しては、指でつまむようなかたちの広告のイメージが「男性のペニスのサイズを揶揄している」として、
撤回しなければボイコットすると脅した。
男性活動家たちは政府にも批判の矢を向け、フェミニスト政策を促進していると主張。
野党の大統領選候補者から、「女性家族部」を廃止するという公約を引き出した。
女性家族部は、20年前に設置された女性政策などを担当する国家行政機関だ。

韓国では、若い男性たちが声高に叫ぶ新しいタイプのポリティカルコレクトネスが判断基準になっている。
彼らは怒り狂っており、自分たちの機会が奪われるとみなせば、いかなる勢力に対してもケンカ腰だ。
そんな彼らにとって最大の敵がフェミニストなのだ。不平等が最も敏感な問題に挙げられる韓国では、
経済の不透明感が深まりつつある。それに拍車をかけているのが、高騰を続ける住宅価格と失業問題、そして拡大する所得格差だ。

「私たちは女性が嫌いなのではありません。女性の権利向上に反対をしているわけではないのです」
韓国を代表する反フェミニスト団体「新男性連帯」の代表ぺ・インキュ(31)はそう話す。
「けれど、フェミニストは社会悪です」
https://courrier.jp/news/archives/280842/