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滋賀に残る様々な聖徳太子伝説、全10巻の「絵伝」に

人魚を助け、竜神と出会い、木や岩に仏を刻んだ――。飛鳥時代の偉人・聖徳太子(622年没)の様々な伝説が残る滋賀県の東近江地域で、伝説を絵画にまとめたパンフレット「近江聖徳太子絵伝」が完成した。地域ごとに受け継がれた伝説をつなぎ、観光に生かす。

 A2判(縦59・4センチ、横42センチ)で全10巻。裏面に伝説を紹介する物語がある。折りたたむとA5判のサイズになり、持ち歩きにも便利。太子の没後1400年を記念した取り組みだ。

 絵伝は、東近江地域(東近江市・近江八幡市・竜王町・日野町)を、八幡山(近江八幡市)や五個荘(東近江市)など10エリアに分け、寺社や史跡に残る太子の伝説を柔らかいタッチの絵で紹介する。

 最初は、太子が八幡山に降り立つ場面。その後、繖(きぬがさ)山で前世は漁師だったという人魚を助け、観音正寺(近江八幡市)を建てる。竜神と出会った鏡山の巨岩は、岩を竜神として祭る竜王宮(竜王町)となった。

 太子が建立した大阪・四天王寺の10万6千枚もの瓦を焼いたのは箕作(みつくり)山の瓦屋禅寺(東近江市)。やがてふもとに街ができると、太子は「定期的に市を開きなさい」と説く。八の日の市がにぎわい、「八日市」が地名になった。各寺院には、太子が彫ったという仏像が伝わる。

 こうした伝説が、各巻5〜8話、計69話載っている。一部創作も加えながらそれぞれの伝説をつなぎ、一連の物語とした。

 各地の伝説を収集し、文章にしたのは元県立安土城考古博物館副館長の大沼芳幸さん(琵琶湖文化史)。絵はイラストレーターの早田まなさんが担当した。

 早田さんは「太子を身近で誠実な存在として描いた。仏像を彫る場面では、自分も一緒に祈っている気分になりました」。大沼さんは「絵本のように楽しんでもらい、絵伝を手に太子ゆかりの地をめぐってもらえたら」と話す。

 制作したのは、東近江市と同市内の寺社でつくる「聖徳太子文化活用推進協議会」。文化庁の補助金を活用した。

 市は3月、絵伝を使って太子の伝説を語るガイドを育成する講習会を開く予定だ。ただ、現時点では絵伝の部数が少ないため、一般の配布や販売はしない。今後、ホームページでの公開や、増刷して観光に活用することも検討している。

 問い合わせは同協議会事務局の市観光物産課