「セーラー服の誕生 女子校制服の近代史」刑部芳則さん…発祥100年 女学校調査

セーラー服の制服が誕生して約100年。全国に900校以上あった高等女学校の資料を10年かけて調べ上げ、普及の背景を詳細にまとめた。
日本大准教授で日本近代史が専門。研究対象は服飾史で、作曲家、古関裕而の評伝を出すなど歌謡史にも詳しい。「どちらも、趣味と思われかねないから手を出すなと周囲に言われてきた。だが、歴史研究の手続きを踏めば、愛好家とは違う成果が出る」

実際、各校の歴史や制服の形態をつぶさに調べることで、複数の学校が「セーラー服発祥校」を主張する論争に決着をつけた。
また、関東大震災で着物の女性が逃げ遅れたため洋装が普及した、とされる通説を誤りだと指摘。それ以前から洋装化の流れはあり、セーラー服を制服とする学校も現れていた。
「全国を回って各校の記念誌を調べるのは大変な作業だったが、断片的な調査では真実は見えない。一つ一つの事実に向き合う大切さを改めて感じた」

セーラー服は、安価で縫製がしやすいなどの理由で導入が進んだ。生徒がデザインを好んで人気があったという発言記録もあり、上級生が下級生のために制服を作る学校もあったという。

「服育という観点からも注目に値する。数年前、アルマーニを制服に採用した小学校が服育のためだと言っていたが、服育は作ってこそのものでしょう」

研究の発端は、中学入学時に抱いた疑問。「なぜうちの中学は男女ともブレザーで、隣の学校は学ラン、セーラー服なんだろう」。まず洋装化の起源を探ろうと、大学の卒論では、国の官僚が着る大礼服をテーマにした。
「制服に関心を持つ人が多いのは、限られた人しか着られないものだから。ステータスであり、受験の狭き門をくぐり抜けた象徴だからこそ、憧れの対象にもなる」(法政大学出版局、3300円)清川仁

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