2018年、韓国では#Metoo告発が相次ぎ、フェミニズム運動が高調する中で、済州島に500名をこえるイエメンからの難民申請者がやってきた。ビザ無しで上陸できたことや、低価格航空便など、偶然の諸条件が重なった結果だ。
だが、韓国では保守系団体を中心に、難民を悪魔化し、「韓国女性の安全を守るため」という名目で反対集会を繰りひろげた。犯罪のためにやってきたという「偽」難民というイメージも流布する。日本でいえば、漫画家はすみとしこの難民嫌悪を想起されたい。
また同年9月、難民の大半に「人道的滞留許可」(難民認定ではなく、ほとんどの権利が制限される状態)が出されたことを受け、済州島の外で、つまりソウルなどで求職活動することが可能になった。そこでさらに難民嫌悪が上昇した。とくに焦点になったのは「女性の安全」であった。「自国の女を他国の男から守る」という極めて家父長制的な視角であるにもかかわらず、この「安全」言説と結びつくフェミニズムも登場する。いかなる論理で結びつくのか?
いわく、「イエメン難民は戦場からやってきた男なので性暴力加害者予備軍であり、また既にイスラム圏の難民を受け入れているヨーロッパでは難民男性によるテロや性暴力が頻発していることからもわかるように、難民男性は韓国女性を害しうる」、ということだ。
これは明確にイスラム嫌悪である。しかし、そのような嫌悪をかきたてる言説が「十分な根拠のある不安」として流通したのだ。つまり嫌悪ではなく、治安と安全を訴えるものとして正当化されたのだ。
さらに、むしろ女子割礼や早婚こそイスラム教の女性嫌悪であると主張し、難民排除の論理を展開した。嫌悪する側が嫌悪から身を守るための安全を訴えるという逆転状況が出現した。この点で、韓国内の保守勢力とクク・チヘら一部フェミニズム運動が強く結びついた。
https://note.com/jinminshinbun/n/n891edb47f7d4