「プーチンは現実から切り離された自分の世界に生きている」 恫喝に動じない唯一のリーダー“メルケル”が見た独裁者のウソ
○電光石火のウクライナ侵攻作戦
ヤヌコーヴィチがロシアへ逃げ出したその1週間後。プーチンによる電光石火のウクライナ侵攻作戦に、当時は弱体化していたウクライナ軍は
不意打ちを食らった。アメリカも油断していた。プーチンと同じく警察国家育ちで、KGB出身のプーチンの残虐さを知り抜いたメルケルでさえ、ウク
ライナについてはEU任せにしていたふしがあった。
メルケルは、プーチンが自由を愛する民主主義者に変わるという幻想は一度も抱いたことはなかった。とはいえ、経済成長を続ける西側をまの
あたりにして、富を愛するプーチンがEU寄りの政策を取るのではないかと期待していたのだ。
しかしウクライナ侵攻により、「欧州の安全保障」という幻想は粉々に打ち砕かれた。プーチンが選んだロシアの未来とは、「西側の一員となる未来」
ではなく、「西側に対抗する未来」だった。
プーチンが仕掛けたのは、「欺瞞作戦(マスキロフカ)」だった。これは20世紀前半にロシア軍が生み出した手法で、「だまし、否定、偽情報」の3つを
駆使するというものだ。
プーチンは、クリミアのロシア系住民がロシアの介入を求めたと言い張った。「ファシストによる非合法の暫定軍事政権が、キエフやクリミアに住む
ロシア人の脅威となっている」と主張し、現地の群衆をあおり立てた。クレムリンによる同じような作り話は、1956年にハンガリー革命の制圧を正当化
するのにも使われたし、1968年の“プラハの春”でも鎮圧のための戦車派遣を合法化するのにも使われた。さらには1948年、東西冷戦のはじまりとも
いうべき西ベルリンの封鎖を正当化するときにも使われている。
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