「監査法人トーマツ及び監査法人業界を更生させる手段は、これより他にはもうありません」そんな文面とともに膨大な資料が送られてきた。デロイトグループの監査法人トーマツは、3000社を超える企業を顧客に持つ4大監査法人の一つだ。監査すべき立場の法人が、自己の決算で粉飾した疑惑があるという。オリンパスの粉飾を調査報道で明るみにした山口義正記者が追う。

≪公認会計士法第34条の15の3≫

監査法人は、内閣府令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

≪第34条の15の2≫

監査法人の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。

「監査法人トーマツ及び監査法人業界を更生させる手段は、これより他にはもうありません」――。

 われわれのもとにこんな切実な文面とともに送られてきたのは、トーマツに関するある重大な問題の概要を説明する文書と、それを補足する膨大な資料だった。それらは内容ごとに3つのフォルダに分けて収められ、さらにその中に資料の種類ごとにフォルダやファイルが階層的に収められ、さらにその中に……といった具合に極めて体系立てて整理されている。

 資料の中身は、監査法人トーマツが自身の決算を粉飾していた疑いを濃厚に示唆する、にわかには信じがたいものだった。その送り主はトーマツに所属する匿名の公認会計士である。会計処理が正しく行われたかどうかを証明するには、どんな証憑や文書、データを示さなければならないか、公認会計士は知り尽くしている。

 われわれが提供を受けた資料は、その会計士が集めた内部資料やメール、それが関係者の間で実際にやり取りされたことを示すマイクロソフトのOutlook、弁護士が作成した非公開報告書など様々だ。すべて読み終えるだけでも、かなりの時間がかかる分量である。

3000社を超す顧客企業で「監査漂流」も
 トーマツと言えば、日本における4大監査法人の一角であり、監査先の上場企業は2021年5月期末時点で約800社を数え、新日本監査法人やあずさ監査法人などと並んで、全上場企業の2割を超える。その顔触れは花王、ダイキン工業、キーエンス、村田製作所、伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、ソフトバンクグループ、三菱UFJフィナンシャルグループといったTOPIX Core30の組み入れ銘柄をはじめとする錚々たる顔ぶれである。非上場企業や独立行政法人、国立大学法人などを合わせると被監査会社数は優に3000社を超える。

 もしもトーマツの決算に粉飾が見つかるようなことがあれば、トーマツはただでは済まないし、場合によっては3000を超える監査先は監査を受けられずに「監査漂流」を起こしてしまう恐れさえ出てくるだろう。その場合、特に上場企業への影響は甚大で、上記の日本を代表する銘柄群は有価証券報告書を作成することもできず、株式市場や資本市場が大混乱に陥るのは想像に難くない。

 筆者はもたらされた内部通報に対して「本当にそんなことがあるのだろうか?」と一抹の疑問を抱えつつ、書かねばならない。なぜなら、この問題はすでに監

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