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コロナでクラスターの「シェアハウス」、それでも若者人気が底堅い理由
今年8月に福島県会津若松市のシェアハウスで入居者7人の新型コロナウイルスの感染が報告されるなど、シェアハウス内でクラスターが起きる事例が度々報告されている。また、SNSでも「シェアハウスでコロナになってヤバい」などの声も散見される。自分が感染したら同居人にも感染させるリスクも指摘されるなか、コロナ禍のシェアハウスの需要には変化が生じているのか。最新のシェアハウス事情に迫った
入居者全員がコロナ感染した
シェアハウスでの生活とは
都内在住のジョージさん(27歳)は、コロナ禍で仕事を失ったことからシェアハウス暮らしを始めたものの、入居者全員が感染するという壮絶な体験をした。
「今年の5月までラブホテルの従業員として勤務していましたが、コロナの影響で売り上げが例年に比べて6割減少。シフトが削られた上に、雇用主とも仲たがいし、退職しました。その後、お金が尽きて、当時一人で住んでいた部屋を出なければならず、友人と家賃を折半したり、知人宅を転々としたりして、最終的にシェアハウスに行き着きました」(ジョージ氏)
ジョージさんが初めに選んだシェアハウスは、住人のほとんどが自室で過ごしていたため交流がなく、たまに顔を合わせるのは共用の風呂やトイレに行くときくらい。なかには1度も顔を見たことがない住人もいたという。
ただ、このときジョージさんは、別のシェアハウスにも頻繁に顔を出しており、「半住人」と化していたそうだ。2つのシェアハウスを行き来していた今年8月中旬、「半住人」だったシェアハウスのメンバー全員とジョージさんは、同時にコロナウイルスに感染し発症。そこの住人たちと相談した上で、通っていたシェアハウスで共に闘病生活を送ることに決めたという。
「一口にシェアハウスと言っても、人数や生活スタイルなどによって、住人同士の関係性はさまざまです。自分が契約していたほうのシェアハウスではお互いのことをよく知らないので、僕がコロナに感染したことを報告したら不安にさせてしまうだろうと考えました。発症のタイミングを考えると、契約しているシェアハウスで感染を広げている可能性が低かったこともあり、気心が知れていて、かつ全員が感染者のシェアハウスで過ごすことを決めました」
全員が同時に感染したとはいえ、具合が悪くなるタイミングや症状の程度はそれぞれ違っており、住人のなかには中等症レベルにまで体調が悪化した女性もいれば、軽症者もいたそうだ。
このシェアハウスの入居者はジョージさん除いて4人。住人それぞれに個室がある物件だったが、まともに声も出せない彼女はリビングに寝かせ、症状が落ち着いている人が交代で看病する態勢をとり、なんとか闘病生活を乗り切ったという。「誰かがつらいときに、動ける人が気遣ってあげられる環境は心強かったですね」とジョージさんは当時を振り返る。
また、療養中に「シェアハウスだから」といって困ったことはなく、むしろ感染前よりも仲間との絆が深まった感覚があるそうだ。
「全員の嗅覚がなくなっていたので、平常時にはニオイが強くてなかなか手が出ないドリアンやくさやを取り寄せて食べてみたりしました。症状がつらいなかでも前向きに過ごせて、皆で病気と闘っている感覚があったのが、このシェアハウスにいてよかったと思える点ですね。もし一人暮らしで感染していたらどれだけ心細い思いをしていたか、想像するだけで恐ろしいです」
その後、無事回復したジョージさんは、闘病前まで住んでいたシェアハウスを引き払い、闘病生活を共にした住人たちの暮らすシェアハウスに引っ越している。
ところで、シェアハウスにおけるクラスターのニュースが報道されるなか、ジョージさんは他人と暮らすことへのリスクは感じていたのだろうか。
「入居者はそれぞれ消毒液を買い込んだり、手洗いを徹底したりしていたので、そこまでリスクとは捉えていませんでした。シェアハウスに住むのは、普通に家族と住んでいる感覚と変わりません。家庭内感染と同じなので、他人同士で住んでいるからといって、そこまで危険視する必要はないと思います」