維新代表ら3氏出演 毎日放送が「政治的公平性」の不備認める

 毎日放送(MBS)=大阪市=が1月1日に放送したバラエティー番組「東野&吉田のほっとけない人」に日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)、吉村洋文副代表(大阪府知事)、創設者の橋下徹氏をそろって出演させ、放送の政治的公平性が問われた問題で、同社は11日、社内調査報告書の概要を公表した。番組作りを担当した制作スポーツ局について「政治的公平性に対する認識が甘く、バランスのとり方が極めて不十分だった」と問題点を認める内容。3氏の出演について、高視聴率を意識したことも明らかにした。テレビ局が政治的公平性について不備を認めるのは異例。

 毎日放送によると、「東野&吉田のほっとけない人」は2021年1月から22年1月まで計8回放送し、橋下氏はうち6回に出演。松井氏が21年1月、吉村氏が21年3月にそれぞれ橋下氏と共演した。

 問題になった22年1月1日の放送は、3人が初めてそろって出演し、「文通費(文書通信交通滞在費)問題」「2021年衆院選の評価」「岸田政権の評価」「大阪都構想」などの政治課題を中心に語り合った。前後半に分けて、ナレーションなどを含めて約40分間にわたり、他の政党関係者は共演しなかった。この回の世帯視聴率は6・9%だった。多くの視聴者から政治的に中立ではないと意見が寄せられ、1月11日の番組審議会でも一部委員が特定の政党に偏っていると指摘し、同17日に社内調査チームを設置していた。

 報告書の概要などによると、バラエティー番組を担当する制作スポーツ局の総合演出が「松井氏と吉村氏が出演した回は明らかに高視聴率で、(橋下氏を含めた)3人に出てもらえたら面白いと思った」と判断。12月上旬に収録した。同局に設けた番組アドバイザリーは表現や用語の点検にとどまり、制作過程など全体の問題点のチェックが働かなかった。

 番組のタイムテーブルを作る総合編成局の担当者らも収録に立ち会ったが、番組担当は「橋下氏が維新と距離を保つ発言をして偏らない配慮をしていたのが感じられた」と考えた。しかし、編集には関与せず、本来の調整機能が働かなかった。検証のまとめとして「内容の多角的な精査や組織的な検討が圧倒的に不足し、組織の課題として率直に反省する」とした。

 政治的公平性を求める放送法4条について、16年の政府の統一見解では一つの番組ではなく、放送局の番組全体で判断すると解釈されている。毎日放送も同じ考えだが、今回の番組は社内の放送基準などに照らし「一つの番組内で政治的に偏りがあってもいいことにはならない。制作、編成の現場にまで正しく浸透していなかった」と不備を認めた。関係者の処分はしない方針で、再発防止策として、放送倫理を明確にするため政治的中立などをテーマにした全社研修の実施や、各局に設けている番組アドバイザリーを全社横断的な組織に再編・強化するとした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ce65e077075cb1fd75d4b2b5fcbfbe7118b0b57b