“トイレに行きたい”けど…あの日「衣装ケース」しかなかった
2022年3月11日 15時31分

トイレが使えなくなり、大勢の人が同じ「衣装ケース」に用を足す。
想像できるでしょうか。
現実に起きたのが11年前に発生した東日本大震災でした。
トイレの備え、考えてほしいです。

トイレが怖かった

宮城県石巻市で被災した山田葉子さんは、当時の避難所での経験を「恐怖だった」と振り返ります。
山田さんが避難していたのは石巻市にある小学校の体育館。
震災翌日にはおよそ800人が身を寄せていました。
しかし、トイレは津波の影響で下水が逆流し、使えない状態でした。
そんな中で避難所の担当者が見つけてきたのが、フタつきの透明な「衣装ケース」。
体育館のステージ脇にある暗幕で囲い、ケースのフタを取ってトイレの代わりに使うことになりました。
避難している人たちが皆で使っていたため、ケースの中には、ほかの人の便や尿があって、においもすごい状態でした。

「もしバランスを崩してしまったら…と思うと恐怖でした。衣装ケースはけっこう大きめのサイズで、高さや幅もあったので、ケースにまたがって中腰になって用を足すのはとても大変でした。しかもケースにはキャスターがついていて動くので、とても不安定で…」

衣装ケースをトイレにした生活は3日間、続きました。
便や尿は避難所の担当者が毎日外に運んで捨てに行っていたそうです。
山田さんはトイレに行くのが嫌でなるべく我慢していました。

「震災前は、災害時に食べ物や飲み物など、体に入れるものの心配ばかりしていて、体から出すことを考えていませんでした。トイレはいつも当たり前にあるものじゃないと気付かされました」

名古屋大学などの調査では、東日本大震災で3日以内に仮設トイレが届いた自治体は34%、半分近くの自治体では1週間たっても届きませんでした。最も日数がかかったのは65日後。

「首都直下地震」では幹線道路が帰宅困難者であふれて避難所や公衆トイレに人が殺到し、最悪の場合、トイレに行きたくてもすぐに見つからない状況が17時間も続く可能性が指摘されています。

マンションでもトイレあふれる

トイレは避難所だけの問題ではありません。

2016年の熊本地震では、マンションの1階のトイレが汚物であふれてしまう…ということがありました。

地震でマンションの排水管などが損傷しているにもかかわらず、上の階の人がトイレを使用したため、下の階の住宅のトイレで逆流が起きたのです。

※略※

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220311/amp/k10013523291000.html

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220311/K10013523291_2203102339_2203102339_01_04.jpg
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220311/K10013523291_2203102102_2203102105_01_05.jpg
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220311/K10013523291_2203102102_2203102104_01_06.jpg