2022年3月12日号
叱っても人は育たないが叱る側はドーパミン噴出
自分の子どもや部下のミスを叱らずにいられないあなた。「叱る依存」かも。
「叱らずにいられない」は依存 難しくても「手放す」必要
──臨床心理士でなければたどり着きにくい仮説ですね。
長年、発達障害と呼ばれる人たちの支援活動や支援者養成に関わってきました。
発達障害の子はものすごく叱られるんです、保護者はもちろん教員、支援職の人間からも。現場は「叱る」から逃れられません。
そんな中で、「怒っちゃダメだけど、叱ることは必要」のような通説に違和感を持つようになった。
「叱る」は相手のためというけれど、何の役にも立っていないどころか事態を悪化させている。
──そこに脳神経科学が加わって。
発達障害の人は大多数の人と比べ脳や神経に違いがある。
どう違うのかを知りたくて、ここ10年くらいは脳・神経科学や認知科学を勉強していました。
そこで、処罰感情の充足が脳の報酬系回路を刺激するという衝撃的な研究と出合ったのです。
後続の研究もなされ、この結論に間違いはなさそうです。
「叱る依存」仮説に至ったのは、依存症にも興味があったから。
苦しい状況にある人が、何らかの物質や行為により苦しさを忘れることに対し、
脳の報酬系回路がドーパミンを放出するために、その物質や行為から逃れられなくなるのが依存です。
処罰感情の充足が報酬系回路を刺激するなら、そこでドーパミンが出て、叱ることから抜け出せなくなるのは道理です。
この続きを読む(ログイン/無料会員登録はこちら)
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29980