2025年4月の大阪・関西万博の開幕までまもなく3年となる。
「未来社会の実験場」のコンセプトを掲げ、“国威発揚”の従来型から環境問題や少子高齢化など“課題解決”型に転換した新しい万博の形を目指す。
だが、機運の醸成はいまひとつだ。関係者は「70年の大阪万博どころか、花博(1990年大阪市にて開催)にも届かない盛り上がりになったらどうしよう」と不安を口にする。
目下の課題は参加を表明している国の数だ。若宮万博担当相は、2月の衆院予算委員会で、自民党の議員から現在の取り組み状況を聞かれ、
「新型コロナウイルスの影響等、非常に厳しい制約もあるが、あらゆるチャンネルを通じて努力をしているところだ」と応じた。

政府は150か国・25国際機関の参加を目標に掲げるが、表明があったのは半分強の87か国・6国際機関にとどまっている。
中でも心配する声が出ているのが、参加国がそれぞれ費用を負担して独自にパビリオンを建設する「タイプA」と呼ばれる出展方法だ。
1970年の大阪万博では、アポロ計画によって月から持ち帰られた「月の石」がアメリカ館で展示され、長蛇の列が出来た。

政府は50か国がこの「タイプA」の形態で出展することを見込んでいて、井上前万博担当相の時代には申請の期限を去年6月末としていた。
すでに期限を半年以上過ぎているが、手を挙げたのは目標の約25%の13か国で、目標には遠く及ばない。

現実的なデッドラインも迫っている。国はパビリオンの工事に2年間をみていて、1年後の来年4月から工事を始める考えだ。
現状について若宮万博担当相は会見で何度も問われていて、そのたびに、「〇か国が参加を表明した」と実数の発表にとどめてきた。

しかし、今月になって、「実態上は50区画のうち、かなり埋まってきているような状況」と踏み込んだ。
政府関係者は「何も進んでいないように見えていたため“実態とのギャップ”を埋める努力を始めた」と明かす。
そのうえで、「相手国の予算、今行われているドバイ万博の総括、新型コロナの関係など、それぞれの国内事情で発表を待ってほしいと言われている国もある。
相手があり、すべてを明らかにすることはできない」と内情を話す。

また、工事費用など見積もりの甘さも指摘されている。
会場建設費は人件費や資材費などの見直しや、会場の中心部に設置される大屋根の設計変更などで当初の予定の1.5倍の1850億円に膨らみ、
費用の3分の1を負担する経済界からは厳しい声もあがる。

会場となる夢洲に地下鉄の新駅を建設するため大阪市が地盤を調査したところ、軟弱地盤などが判明し整備費が当初の予定より約129億円増えた。
大阪市の中心部と万博会場となる夢洲を結ぶシャトルバスの専用道路としても活用される予定の阪神高速はさらに深刻だ。
おととしの時点で約700億円の追加費用を発表していたにもかかわらず、今月、周辺住宅でコンクリートのずれなどが確認され、工法の変更を余儀なくされたとして、
約1000億円の追加費用が必要となった。

事業費は当初の想定の約2.5倍の2900億円に膨らむ見通しだが、工事が間に合わないおそれもあり、大阪市は数十億円をかけて仮設の道路を作る案も検討している。
大阪市の担当者は「さらに費用が上振れする可能性もある」と懸念を示している。

政府関係者は「さらに1000億円というのはなめている。明らかに大阪市の判断ミス」と突き放す。
大阪市の松井市長は「大阪市の財源についてはできるだけ抑えるように国と交渉したいと思う」と話す一方、
「当時、地盤の調査とかそういうところの考え方が甘かった部分は否めないと思う」と責任を認めている。

こうした中、関係者が期待を寄せるのが、万博の公式キャラクターや民間のパビリオンだ。公式キャラクターは現在3候補まで絞られていて、意見を公募したうえで、最終決定する方針だ。

https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/6/780mw/img_c643abb4f97085929db07a0942e10817172990.jpg
https://www.fnn.jp/articles/-/330489