為替レートが実質的に50年前の水準まで円安になったという事が話題になっています。
それによって日本人は貧しくなってしまった、というのです。

ドル高円安という事は、外国人の給料を日本円に換算した値は増えているわけで、日本人の給料が上がっていないわけですから、外国人に給料が見劣りするようになったのは当然のことですね。
同じ事ですが、日本人の給料をドル建てに換算して国際比較しても見劣りするわけです。

しかし筆者は、悲観していません。
ドル高ということは、海外の物価水準も高くなっているはずですから、「外国人の給料は高いけれども物価も高いので生活水準は日本人と変わらない」という事になっているはずだからです。

そもそも日本人が日本で暮らしている以上、外国通貨との交換比率がどうなろうと日本人が貧しくなる事は基本的にないわけで、外国人と比較して貧しくなったと考える事自体が無意味だ、という事も言えそうです。

ドル高によって、日本人が海外旅行に行くコストは高くなっています。
海外からの輸入品が値上がりしているならば、生活費は上がっているわけで、給料が変わらないならば、その限りでは「日本人の生活は貧しくなっている」と言えるかもしれません。

一方で、日本人が持っている外貨が値上がりしているという事は、日本人の財産が増えて日本人が豊かになっているという面もあります。
日本の対外純資産は巨額ですし、資産は外貨建てで負債は円建てが基本ですから、ドル高になると純資産は大幅に増えるかも知れないのです。

外貨を持っている資産家は豊かになっているが、外貨を持っていない庶民は貧しくなっている、と考える人もいるでしょうが、筆者は悲観していません。

一つには、政府や公的年金等々が持っている巨額のドルは国民全体の財産ですから、それが増える事は庶民にとっても恩恵が期待できる事なのです。

もう一つは、国民全体の財産が増えているならば、あとは分配を考えれば良いわけで、たとえば富裕層に増税して庶民に減税する、といった事を検討すれば良いのです。

世の中には、悲観的な事を言いたがる人が大勢います。
評論家は「大丈夫です。」と言うより「問題です。心配です。」と言う方が賢そうに見えますし、客の関心を惹き易いでしょう。

マスコミも、楽観的な言い方よりも悲観的な言い方をする方が視聴率や売り上げが伸びるでしょうから、悲観的な事を報道したがります。

海外出張した日本人が、ホテル代が高くて苦労した話を聞くと、「日本人ビジネスマンは海外出張しても三流ホテルしか泊まれない」などと書きたがるマスコミは多いのですが、「海外で三流ホテルに泊まる予算で国内なら一流ホテルに泊まれる。日本は素晴らしい国だ」と書くマスコミは少ないでしょう。

ひと昔前までは、「円高で輸出企業が大変だ」と大合唱していた事を思い出せば、今の円安で輸出企業が大儲けしているかも知れない、と思えるわけですが、そう書いているマスコミは少ないでしょう。

世の中には悲観的な事を言いたがる人が多い、という事を頭の片隅に置いておくだけで、「世の中は、困ったことばかりではないハズだ」と思えるでしょう。

筆者は天邪鬼ですから、円高の時に人々が言っていた事を思い出しています。「円高だから海外旅行に行くと一流ホテルに泊まれる」と書いていたマスコミよりも、「円高なのに国内ホテルが値下げしないから、国内ホテルの方が海外ホテルより遥かに高い。内外価格差は問題だ」と書いていたマスコミの方が遥かに多かったわけです。

それをひっくり返して考えてみれば、今の日本もそれほど困ったものではない、という気がしてくるわけですね。

https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/c3357ee209a918fa60bc74b3f3924694f080abf9&preview=auto